非常識の衝突 2
「おい、騎手が足つけたら反則じゃねーのか!?」
智が叫ぶが、
『いえいえ、彼女達はルールに遵守してましたよ? それ言ったらあなた方も落ちるってことですしー』
「くっ……」
凛堂はきっと公平に見ている。だから真実だろう。
ともかく騎手の更識、騎馬は先頭にAのクラス委員長、後ろは副委員に、B組の美空だった。
「……一応聞きたいが、混成はルール上どうなんだよ?」
『それはですねー』
地獄耳か? 距離遠いし俺声張り上げてねーぞ?
『ルールが少々変更になりました。現在混成のため、AB組どちらかが勝てば30が15ずつ、負けても5点ずつ加点となります。––––そしてC組は勝てば倍プッシュ60点に対して、負ければ0です』
「うーわ、負けらんねー」
「どうすんだユウマ!」
とは言われてもなー、と考えるが、
「……まずは目の前の敵だな」
と、全員警戒態勢に入った。
「ハジメ、何かアドバイスあるか?」
「……多分単体戦はカスミが強い。俺とサトシは集団戦だからな」
「オーケー、じゃあ突っ込むしかないな!」
「おうよ! おっせェェェエ!!」
「あいよ、ウオォォォォォオ!!」
全力で智と信木が一の背を押し、そのまま横を通り過ぎる。
互いの手が触れるが、鉢巻へは届かない。
「くっ!」
「このっ!」
交錯するグラウンドで、未だにうまくいかない状況。
手強い。俺は更識のスペックに感心し、だからこそ……。
「更識さん! 上をお譲りしたのですから早く掴みなさいよ!!」
「な、無理いうんじゃないよ! あんな化け物とあんたが対峙できんの!?」
「フッフッフ、そんな事当然ですこと。オーッホッホッホ!」
「あーむかつく! やってやろうじゃない!」
血が上ったのを確認し、俺は一に耳打ちした。
「……マジでか?」
「マジだ。そういう相手と俺は思うが?」
「……ハァ、お前の愚痴を聞かされるこっちの身にもなれよ」
悪態つくが満更でもない顔が肯定していた。
「覚悟しなさいユウマ!」
突っ込んできた更識に、俺は手をかざす。
「……キャッ!?」
瞬間、小さくぽこっと凹んだ地面に足を取られ、環と千歳、美空には申し訳ないが崩れてもらおう。
「………ッ!!」
「なっ!?」
しかし想定外に、躓いた環の体勢を千歳が整え、一度距離を置かれた。
「ご、ごめんなさいトモコ、まさか躓くとは」
「いいわ別に。怪我しなくてよかったわ」
もちろんわざと転ばせるのだから安全は講じたが、まさか上手く躱されるとは思っていなかった。
「……だが、悪いな」
「「!?」」
再び走ろうと足を上げようとして異変に気付いたのは千歳と美空だった。足が地面に埋まっていたのだ。
「…なん、で?」
「そんな、これって!?」
「どうしたのふた……ッ! ユウマーー!!」
彼女がこちらを向く時、俺達は既に霞の鉢巻を取っていた。
「『種も仕掛けもございます』。どうぞお考えください」
鉢巻きを取られたと同時に、足が何事も起こらなかったかのように綺麗に解放されていた。
『平和湧磨が取り、残りは二騎のみ!!』