状況とタイミングを誤るもの 5
「まだまだ!!」
生き生きとした舞夜が追っかけてる。
「取られるなよユウマ!」
「わーってるって!」
風を切る速度で走るが、相手の足もなかなかだった。
「行くのじゃ!! 我のために働けー!!」
『イエス、マイプレシャス!!』
洗脳でもしたか? こえーんだけどアレ。
商店街外の田畑から一周し、商店街入り口から住宅街から学校に引き返す。
「くっ、D班!」
「まっかせて!」
住宅街で待ち伏せしている地点に誘導し、通ると同時に女子組が角から出てきた。
「な!?」
「もーらい!」
手はすでに舞夜の鉢巻まで来ていた。しかし、
「…ってね!」
顔を晒し、そしてカウンターでD班の鉢巻を掴んだ。
「なにー!……なーんてね!」
一瞬焦ったものの、ニヤッと笑った彼女に舞夜は警戒したが、一手遅かった。
「そらっ!」
既にUターンした俺が舞夜の鉢巻を取った。
「うそ!?」
「本当だ! あばよッ!」
俺たちはすぐ角を曲がった。
このように、地理がわかっていれば一撃離脱は容易で、陽動、牽制、奇襲がかなりしやすいのだ。
……が、それは俺たちの専売特許ではなかった。
「もらったぞヒラナゴ!!」
「のあっと!」
角からA組男子に奇襲返しされた。
「な!?」
「……ま、今のは危なかったな」
もっとも、簡単にさせないがな。
鉢巻を二本腕に括る。
「ハジメ、どう思う今の現状は?」
「……厳しいかもしれない。早めに煤野妹を退場できたのが不幸中の幸い。……しかしリーダー格はそうはいかない。それにB組はまだ温存しているかもしれないしな」
「なら、まずはその温存兵を削りつつドームに戻るか」
俺たちはそれから、様々な奇襲を潜り抜けて、再び学校への坂まで戻ってきた。