状況とタイミングを誤るもの 4
「誤ったな」
「…誤ったな」
「……マジどうすんだこれ」
現在20分経つ。
すでに半数近くがやられて、しかしABどちらもかなり削れているらしい………とリブが告げた。
『いやー、指示出すの大変よ? そこらを飛ぶドローンの仕事とかやらされるし、マジでユウマめー!』
ご立腹だったが、その撮影用ドローンのおかげで商店街まで降りることを許されている。
「いや、本当にこんな事が下りるとは、こいつ相当ロリ理事に好かれてんだな」
「ああ、人望の厚さは右に出ないな」
「同感! ってかマジで起きないけど死んでねーよな?」
「……死ぬかよ、そんなんで」
と、ようやくユウマが目覚めた。首に手を当てコキコキと鳴らしつつ、
「…現状は?」
と聞くのでリブに解説してもらった。
「……そっか。かなり善戦したんだな」
と感心しつつ、
「…ま、寝てた詫びとして、これやるよ」
と懐から写真を数枚渡す。
「…お前いつから撮ってたんだ?」
「魔法だ」
その写真は、まあ、文字通り『全員が映る日常風景』だ。嘘はついてないしいいだろ、別に。
「これでお前の面目も守れるだろうし、流石に申し訳ないからな」
「……ま、確かに『アイドルの日常』だな」
と、ノブキはニヤッと笑みを浮かべる。
「……へー、そんなの撮ってたのねユウマ?」
ビクッと、そしてバッと後方を向く。
後方に二騎、言うまでもなく両クラスのリーダーだった。
特に強い殺気はB組の、麻央と文坂から発していた。
「……ユウマさん、あまり騎馬戦を侮辱しないでください。騎馬戦とは決められた範囲で、正々堂々と真っ向勝負ですよ?」
そんなの文坂に反論したのは、信木だった。
「おいおいキキ、騎馬戦は元を辿れば戦国の戦を模したものだぞ。計略、策略、秘策、あらゆる策を講じることにこそ意味あると思わねーか? 関ヶ原然り、壇ノ浦然り」
俺もだが、やっと今までにない殺気に耐性ができた信木は、笑ってはいるが少し怒りを含ませていた。どうやら『キキが』と言いつつ、こいつにもそれなりにこだわりがあんじゃねーか。
さて、だったら俺はもう一人の方に対峙すべきだろうな。
「……ま、そんなわけで楽しんでるかマオ、ユウカ」
「………ボチボチ」
…ユウカ、青い顔で目を晒さないでくれ。本人でも怖い奴に俺は目を向けているんだから。
「…ユウマ」
麻央はニコリと……どす黒いオーラを纏っていた。
「朝は結局逃げちゃったね」
「ハッ、お前から逃げることくらい朝飯前さ!」
「……ユウマ」
「…なんだ?」
口元が緩んだ麻央は言った。
「……首輪、僕は赤が似合うと思うんだ?」
「ハジメ、サトシ、全力前進!!」
一気に駆け出した。
「させないよ、マヤ!!」
駆け出して商店街を抜けようとした時、左から何か突っ込んできた。
「止まるな!」
ギリ後方で横切ったそれを見ると、何故かA組に振り分けられた運動部三強と、それにまたがったマヤだった。