状況とタイミングを誤るもの 1
「……お前ら大丈夫か?」
一の哀れみの視線などはで屁ではない。
あれから互いを餌食にした活性法は功となし、お互いボロボロながらも同点まで行き着いた。
「お、俺ら勝てんじゃねーか!」
「わたし、諦めてたけど頑張ろうかな!」
それぞれにやる気にも満ち溢れている。もう必要ないほどに燃えていた。
「…だが、お前を餌食にできなかったのが一番悔やまれるな」
「おう、この色男は落としておきたかった」
「俺の心配を返せ……」
こうして皆、一丸となって挑む姿勢は良いものだと思いつつ、午前最後の種目『騎馬戦』に挑むこととなった。
『おおっと、やはり二年でも島釜は無敵だーー!!』
三年生から始まった学年別騎馬戦。
三年生は、確かに高校生としては高い試合だったものの、二年の島釜の騎馬戦無敗戦績に遠く及ばなかった。てかあの先輩人間辞めてないか?
「……おい平和、まじでやるのか?」
一Cみんなを集めたブリーフィング、そこで俺の提案を話すと皆、苦笑いする。
「ああマジだ。大丈夫、理事には通してあるから!」
皆が呆れ返り、しかし異論はないとばかりに段々と悪い笑みを伝染させていった。
「……確かに『聖夜の魔法使い』らしいぶっ飛んだ考え方だな!」
「やろうみんな! これならワンチャン『キシン』にも勝てるかも!」
「『キシン』?」
何故か突然、全体的に共通認識とばかりに理解していく言葉に俺は首を捻って、信木は「ちょっと来い」と俺と一、智を連れて少し離れたところに連れてこられる。
「「「『騎神』って文坂の事なのか!?」」」
「…そうだ」
騎神の幼馴染は神妙な面持ちで頷く。
「……あいつ、小学校の頃からやけに騎馬戦でだけ何かしらの思い入れがあるのか人が変わるんだ。それでいて強い。小五で片鱗を見せてから中学最後まで騎手。正直さっきの島釜先輩とタイマンはれるくらいだと思うぞ」
島釜は確か十騎倒したぞ。B組のフライパンは化け物か! ……あ、フライパン掲げてたら鬼だわ、鬼神だわ。
「とにかく……さっきの形式なら混合戦、案外共倒れからの漁夫の利もありだが、マジであの策するのか?」
「勿論だ。むしろそれの補強案にもなるからな」
「……となると、あとはユウマとノブキの挑発に乗るかどうかだな。ミスすればただの無効試合にされるが」
「大丈夫だハジメ、もう何も怖くない……」
「ああ、オレも恐るものはないさ……」
「遠い目してるぞおまえらー」
……さて、せめて昼食までは生きていたいと願いつつ、俺たちは既にトラックに向かったクラスメイトを追って駆け出した。