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「リンドウ」
「…おやおや、執事様がどうしたんだい?」
放送ブースに現れた島釜に、ニィっと笑いかける。
「イケメン君が来るとあたしも大変なのよ? やれ相引きだ、やれ愛人だってさー」
「守備はどうだ」
「……相変わらず素っ気無いね貴方」
一台のノートパソコンを開き、
「……監視カメラ、巡回覆面、共に報告なしね。葉坂の防衛設備もだけど、『坂棚』と『幸畑』の協力は想定以上、さらには『粉吹市の番人』の警官二人も警戒中。……『アルネス』から仕掛けてくるかしらね」
「警戒は怠らな。仕事を果たせ『メイド長』」
「…あのさイナツ」
あまりに堅い男に、
「警備もいいけど、ちゃんとハナを見てなさいよ?」
「私は見ている」
「見てないわよ全然……鈍感執事が」
最後の方は聞こえなかったのか、彼はその場を去る。
「…いったわよ」
「ぷはー!」
そしてロッカーに隠れていた二人の男子生徒がバタン、と倒れ込む。
「いやー、あの人堅すぎなんだよなー」
柴田智はぼやく。そこには同意かもしれない。
「貴方、そろそろ競技の時間でしょ? 行きなさい」
「いや、まだ話が終わってない」
と、珍しく真面目な顔をする智は続ける。
「…凛堂特務中尉、現在我が隊が持ちうる情報の補足資料を」
「ありがとう。さ、行きなさい」
「…はい、失礼します!」
敬礼をしそそくさと去る。
資料に目を通し、
「……やはり紙だけじゃダメね」
パサっと捨てる。
「…一度、あたしも出向いてみるかしら」
複数の顔を持つ彼女は、マイクのスイッチを入れた。