後払いは利子がつく 2
『次は男子の棒倒し』
「……って、もう三つ目か」
「じゃ、予定通り頼むぜノブキ」
既に三度、予行演習で敗退続きだったC組は意気消沈気味。なればこそ、このお調子者に本番での底力を点させるつもりだ。
俺たちC組の結束をなめた二組に断罪を!
「おうよ! お前の犠牲は忘れねーから」
「…………ちょっとまてノ––––」
不吉な言葉に俺はすかさず奴の口を覆うはずが、事前に予告していたかのように後ろから一と智に押さえつけられた。
「またテメー!!」
俺の言葉を無視し、奴は熱弁した。
「いいかヤローども!! 昨今我らが裏切り者平和湧磨は、同じく一年のアイドル二人を侍らせるには飽き足らず転入生、果ては会長にまで手を出した!! お前ら、こんな奴が注目されてていいのか? オレらが目立つ時は今日、この場所にあると思わねーか! 漢の生き様ってやつを見せてやろーぜ同志たちよ!!」
『オオーーーーーーーー!!!』
完全炎上。クラス男子達は闘志を燃やし、一回戦のA組、そして二回戦のB組をなぎ倒してしまったのだった。
そして何故か、終わるたびに俺は総攻撃を喰らった。
「……テメー、謀ったな?」
「いやいや結果として勝ったしいいだろ?」
タンコブ多数の頭で、俺は信木の胸ぐらを締め上げる。
「い、いやほら、結果予想外に先輩達にも飛び火したしさ!」
「その分三倍だがなー?」
「ギブギブギブッ!!」の声を無視し締め落としぐでっとなった信木を捨てた。いや優しいよな? 俺三年生にまで(全員ちゃんと手加減していたが)タコ殴りなのに、こいつは締め落とす程度で済んでんだしさ?
ひとまず休憩時間で観客席に座る。ちょうど入れ違いで女子の綱引きだから麻央とは蜂合わない。
俺は自販機で買ったサイダーを飲み、そして吹いた。
『ああっと! 一年A組が勝ったー!」
瞬間の映像に流れたのは、対戦相手のC組が若干地に足がつかない勢いで引かれた事。
そして、その根元にいるのは無表情で引いた優華だった。
「すごいよ傘木さん!」
「あんなあっさりって、びっくりしちゃった!」
優華の周りにクラスメイトがキラキラと優華に注目し、対して優華は途端に真っ赤になって俯いてしまった。
「…何やってんだバカ」
なんとなくわかったのは、あいつが今、本番で張り切りすぎたことだけだ。長年左腕してただけ分かるさ、あいつの時としての感情先行には。あれ、自称麻央の妹だからな、一応。
まあ、本家には勝てなかったようで、B組の勝利で幕を閉じたがな。