説教 3
「まずは君からかなー?」
麻央はチラッとミサを見た。
恐らく誰にも怒られた事ないミサは、すごく涙を流して俯く。
しかし麻央はニコッと、今度は魔力とかオーラとかを感じない純粋な笑顔で頭を撫でていた。
「…いい? ユウマは基本は常識人のように『力は使いたくない〜』とか『バレてはいけないから使うな〜』とか言うけどね、実は昔はむしろ率先して使っていたんだよー? ほーら、自分が不利な時はフード被ってそっぽ向くの」
そりゃジトーっと見られたらそっぽ向きたくなるって
子供を諭すように叱った。
口調が先程と明らかに違い朗らかで、ミサは恐る恐る顔をあげるが、それでも目線が合うまで上がらなかった彼女のほおを抑えて強制的に麻央は目を向けさせた。
「ほーら、人が喋っている時には目を合わせないと、まだまだお説教しちゃうぞー?」
と言いつつ全然起こっていらっしゃらない麻央に、だんだんとミサも緊張が解れていく。
「いい? ユウマは一度使うと調子ついちゃうの。だからあまり頼み事はしちゃダメよ? こんな大掛かりなことは、代わりに僕が手伝うからね」
「…うん、わかったよ……マオねえ?」
「うんいい子いい子」
「…エヘヘ!」
煤野麻央には『無自覚のカリスマ』がある。
彼女はそれを当たり前のようにするが、その一挙手一投足は、人間に敵意を向けていた魔族を変えるほどのもので、それは多分『恐怖で従わせる舞夜』とは真逆の性質を持つ。それこそ、魔界を分裂させるほどに。