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「……お、ルシーか」
早朝、メールした時間にルシーが現れた。ルシーは俺の傍に立つギンキに嫌そうな顔をする。
「なんだ、生きてたか」
「貴様が死ぬまで死ねんからな」
特に見た目的にはボロボロではなかった。
「申し訳ございませんユウマ様、しばらくの間音信不通の状態が続いてしまい」
「いやいいんだ。お前が無事なら安心だし、マオも喜ぶ。今日はいるよな?」
「はい、ぜひマオ様の有志をこの目に焼き付けたいと思います!」
「ハハ、あなたも相変わらずの忠誠ですね」
と今度はバクが現れた。
「お、お前も一緒だったのか」
「はい。むしろついてきてもらったんです、ルシファーどのには」
「なんかあったのか?」
「はい。……敵とはいえ同族の弔いをイディオで」
なるほど、現状異世界に通信は届かない。だからここしばらく確認も取れなかったのだろう。なによりここでは流石に死体でも異形の存在を弔うことはできない。
するとバクは後ろを向く。
「…弔いを彼女にも頼んだんです」
と現れたのはカナコと、おそらく付き添いのハンサだった。
「お前ら!? 最近合わないと思ったらそう言うことか!」
「す、すみませんギンキさん!!」
カナコは深く頭を下げた。が、ギンキは別に怒ってはいなかった。
「まあ、心配するから連絡入れてから行ってくれ。ほら、今回は聞かれなかったが優華だって心配するしな」
「……ふっ、変わったなギンキ」
俺は今、きっと思い描いた共存が実現しているのだと思う。ギンキは誰よりも魔族嫌いだったが、今はこうしてうまくやっている。
だからこそ、こっちでのトラブルは削りたいのだがな。
「……なるほど。分かった! 俺らはその商人がいないか見回ればいいのか?」
「そうだ。ユウカ派には『商人』、マオ派には『暗殺集団』を頼みたい」
「相変わらず物騒な単語が出ますねユウマは」
ギンキはしかしニヤッと笑みをこぼし、
「……確かに、我々魔王一派はそちらと違い人手が足ります。警護や観客に紛れ注意をさせてみましょう」
「ああ、期待してるぞバク、ルシー!」
そしてギンキ達の方を向き、
「お前らは基本、今はカナコが生徒だから二人しか動けない。しかし不測の事態でも個々の戦力は充分と判断して、申し訳ないが調べられなかった『商人』の警戒に当たってもらう」
そこで俺はさらに横を向き、現れたのは人影に手を向ける。
「だが、今回は強力な助っ人として『松尾 恵』さんに手伝ってもらうことになっている」
事前に彼らも会っているから特に異論はなく、恵は頭を下げる。
「どうか、微力ではございますがよろしくお願いします」
「い、いや頭をあげてください!!」
珍しくギンキが慌てる。
まあそうだろう。この人に『幸畑製薬』へ出資、現医療技術の共有をしてここ2日でますます発展したのだ、頭が上がらないのはこちら側だ。
しかし彼女は頭を振る。
「……残念ですが、今の私達の科学で、あなた方が扱う『魔法』にはかないません。こうして手を結んでもらえたことに感謝します」
「…まああれだ、『win-win』だからお前も頭上げろギンキ」
「…今だけはお前に言われたくないと思うがな」
と悪態つかれたが渋々頭を上げた。
今回は事前準備は万全だ。もう後手に回らないと信じたいものだ。