悪ノリは程々に 3
「………うそ」
第一声は優華だったが、皆がそう思う。
原型のなくなった森に一つのドーム。長径約一キロ、短径0.8キロの楕円形型と、階段を登った先の入り口に小さく書かれていた。
山の中まで浸食したドーム内は明らか高校どころか、平均的運動競技場を超えたものだった。
「……いや、確かこれに似たとこが真反対側にもあったよな」
「あー、あれは旧体育館になったよ」
オレの疑問に答えたのは愛花だった。
「いやー、計画は聞いてたけどここまでとはねー」
と彼女も珍しく脂汗を滲ませていた。
観客席が1万を超え、商店街協力の移動販売完備、警官巡回……。
「……これが運動会会場であってたまるかあああああああ!!」
「…して、のちは隠しギミックをつけて戦艦発進! って感じは!」
「悪くない。なら終わった後はここを要塞にして––––」
「校内で戦争がしたいのかお前らハァァァァァア!!」
全力で走り抜け、オレはグラウンドの中央で悪巧みする三人の一人をドロップキックした。
湧磨はズザーっと地面を滑り、そこから複数人でフルボッコだドン!
……約数分、更識、綺紀、智、オレがリンチにし、湧磨を正座させる。
「……お前だよな火付け役は。わかってんだよ、これでも三ヶ月の付き合いだ。お前が時に悪ノリするって事くらいよー?」
「いやーノブキさん、なんか三ヶ月前みたいにヤンキーなってますね」
チョップを喰らわし、オレたち全員溜息をついた。
オレたちはこいつの方をそれなりに心配はしていた。『霧隠し』でも独断先行していた前科もちだ。
だが同時、こいつは今見たくヘラヘラっとなにも無かったかのように笑っていやがるから、オレたちの心配は無駄となるんだ。
そしてそれを一番に知る少女は、皆より前に出て湧磨の前でしゃがみ、朝のタッパーを包んだ布を笑顔で突きつける。
「ユウマ、食べよ?」
湧磨を待って最後まで食べずにまっていた少女は笑顔でそう言い、一瞬ポカンとした湧磨は苦笑してそれを受け取った。