悪ノリは程々に 1
「…は? まだ帰ってねーのか?」
当日朝、湧磨宅に集まったいつもの面子に湧磨本人の姿はない。
昨日、一昨日と湧磨は帰らず、授業にも参加していない。
今日は当日のため、今日から5日間バイトはなくなったから狭い。
ご飯を用意したのはオレと煤野と更識だ。
ここではなんだが、実は綺紀は料理がヤバイ。味はすごく良いのだが……それを打ち消す見た目。何故逆になる、と問いたいが、彼女自身に自覚なく、少なくとも今日のように囲む人数が多い時はやらせないようにしている。
そして驚いたのは優華だ。
実は入居3日目に一度作って皆瀕死になった事がある。湧磨は最後まで止めようとしたが、当の本人はぺろっと完食。3日ほどうなされていたため、あれ以降誰もが止めるようになった。
なお舞夜はと言うと「面倒だからパスじゃ」とだらりと机に伸びていた。
「こうして考えると、女子で過程的なのって煤野と更識だけだな」
「私も作れるよ!」
と最近よくくる椎倉はアピールするが無視する。てか確かにうまいが、こいつの場合はわざとまずいの食わせたり実感したりするから食いたくねーよ。
「…本当、キキはフライパン常備しているのにギャ!?」
「悪かったわね!」
綺紀に叩かれた。いや本当に痛いってその鉄屑!
食べ終わって食器をしまう中、煤野はせっせとタッパーに料理を詰める。
「お主もようやらなー」
煤野妹が傍で腕を組み、しかし手を貸す気はなさそうだ。
きっと湧磨なら手を貸しただろうと思い、かわりにオレは残りの半分を詰める。
「これ、ユウマのか?」
「…うん!」
頬を赤くした煤野はさらに早く爪終わり、オレの詰めたタッパーを合わせて布に包む。
「ま、流石に今日いないってことはないだろうよ」
「ほら三人とも早く行くよー!」
タイミングよく更識が声をかけ、オレたちは部屋を出た。
6時53分、平和湧磨のいない3日目の朝が始まった。