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「独断先行とは、お前らしくもない」
少年が廃ビルの屋上にて夜風に当たっているところに声をかけた。彼はこちらを見ずに、しかし不機嫌なのは分かる。
「……あの男、手強い」
「ほう、お前がそういうとは珍しい。……余程手痛い返しを喰らったか?」
「…申し訳ありません」
「いいさ」
彼の頭を叩く。
「現状打開案は、悔しいがあの商人の武器だけだと思う。当日私が指示できるかわからない。お前に全ての権限を一任するだろう」
「セイさん、俺には荷が重いです」
「それはない。お前は『アルネス』のホープだ。既に私を超えようとしている。だから安心して任せられる」
「……あなたは?」
何かを悟った目で私を見る。
「……『アルネス』を今一度洗い直す。もし本当にこれが今のボスの考えなら……お前は去る私を殺すか?」
「あなたの犬です。どこまでも」
彼は当たり前と言いたげに即答する。流石に苦笑し、私は頬を叩く。
「いや、やはりこの仕事は私も参加する、汚れ仕事を子供に押し付けて逃げるつもりはない! ……いざとなれば私がお前たちを守る」
彼の頭を撫でつつ、私は決意を固められた。
彼が抱える事を、私は気付かないまま。