宣戦布告
間違ってはいない、とあの人は言った。つまりは「そういう事」だろう。
俺は答えを得て、この後の方針を固めつつ長い道のりを歩く。てか門まで遠いし、ヘリ来ねーし。
ああ愚痴りたい! このひどい帰し方に愚痴りたい!
「…だから早く帰してくれませんか先輩?」
俺は不満の矛先を、門でたたずむ島釜に向ける。
「一応当主に話はつけたっすよ? ならあなたがこれ以上口出す必要は––––」
またも銃口。なんかデジャブったぞこれ。
島釜は冷徹に、無機質に、感情を見せずに告げる。
「貴様にお嬢様は任せられない。近づくな」
「ならあのお嬢様に言えば? 俺は学校のボスのご指名だからやるだけっすよ?」
先程から考えていたが、こいつ、もしかして……。
俺はあえて挑発的に、無詠唱『エアアッパー』で拳銃を弾く。
「!?」
さらに牽制の意味も込め風の結界『エアサークル』を発動。彼は横に飛び、距離を開く。
なんとなくわかってきた。これが外れなら恥ずいが、もし当たりなら、この挑発で準備は完全に整うはずだ。
ただ憎々しい顔を思い出し虫酸は走るが、そいつを真似た含笑いをみせ、告げた。
「そんなに守りたいなら二人三脚で勝てよ。まあ、勝てなきゃ俺がもらうがな! ……そもそも先輩はあの人の何になりたいんですか?」
「私はお嬢様の––––」
「ちげーよ!! 俺が聞きたいのは『松尾花』のことで『松尾のお嬢様』の話じゃねーんだよ!!」
演じるのも簡単ではない。内心テンパってきたが、島釜がそれ以上口を開かなかったため、俺は悠々と門を潜る。
それからまた孤立はしたが、ひとまず会長の助略で被害はなく、島釜も関わってこない。
そして気味の悪い静かさの中、運動会当日がやってくる。