富豪四天 1
「よ、助かったぜミサ!」
「へへえ、まあね!」
ヘリを呼んだのは松尾のほうではなく葉坂、つまりその中でニコニコ待っていた『葉坂 ミサ』だ。
元々松尾邸に潜って会長と会った時に先に当主と会う機会をもらうつもりで会長に連絡をさせた。しかし若干渋ったようで、ダメ押しでリブ経由でミサに連絡、理事長権限や彼女の能力の一部を対価に交渉の場を設けてもらった。
元々ヘイトが高いというのは知っていた。入学前にルシーが警戒しろと言っていたことを昨日になって思い出し、今彼女とかなり近い距離にいるとわかったときの当主の心情を考えるとはやめにてをうつべきとおもったのだ。
まあ、島釜の件がフェイクかと言えば、それも違うがな。その件でも、会長いわく島釜を高く評価してるという当主に聞きたいと思っていたし......。
邸宅につき、廊下を歩き『恵』と書かれた扉を島釜がノックする。
『... どうぞ』
女の声に少し驚きつつ、俺は島釜が開けた扉の先を考え固唾をのむ。
「どうもお越しくださいました、ユウマさん、ミサさん。どうぞおかけください」
対面式の二つの高そうなソファー、本棚の数々、そして窓際の大きな机。あれだ、社長室だこれ。
俺はかなり辺りを見回しすぎたのか、対面の婦人が途端に笑った。
「...なんでしょうか?」
「ははっ.....ごめんなさいね。『聖夜の魔法使い』の私個人の印象と違って、年相応の少年だったものでね!」
機嫌を良くしたのか、三人分の紅茶を注いだ島釜に、
「ありがとうイナツ。もう下がりなさい」
「ですが」
「いいわ。私の勘違いで不快な思いをさせてしまったのに、今も不信感を持つあなたは出ていきなさい」
「...かしこまりました」
と渋々部屋を出て、
「あ、扉の前で待機しないで。今から大事なビジネスをするのだから」
「...はい、仰せのままに」
見透かされた島釜は扉を閉め、そして気配が遠ざかっていった。
「...さて」
彼女はカップを置く。
見た目は確かに会長に似ているところが多く、しかし身長は明らか高く、大人の色気があった。まあ、般若の麻央が脳裏に出て何も思う気はないが、なんか寒気がする......。