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魔王と勇者に好かれた者 [再修正しますm(_ _)m  作者: ヨベ キラセス
第二章 幼女会長と暗殺者に思案したもの
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魔法世界に探偵は要るか 4

「……マジか」

 オレは湧磨の呟きを聞く。


 数分前、念のため湧磨に、駆けた後に一度森に入るように促す。

 木々に身を潜めていると、オレたちを追ったであろう煤野と綺紀、遅れて更識に傘木に煤野妹が通り過ぎて行った。


「…アレは見えたってことか?」

『まー、文坂ちゃんにもだけど、結構強力にかけたのにさすがマオって感じね』

 リブは感心した。こっちは心臓が止まりそうだった。


 そのすぐ後に椎倉の指示で、下手に落ち合わないルートでオレたちは再び尾行を開始した。





「……なんもねー」

 オレたちはしばらく歩くが、一向にスキャンダルじみたことを起こしてくれない。

 道端の猫にお菓子を分け、老人の荷物を代わりに持ち、小さめの運動場にて同級生と日が落ちるまでサッカーをする。

「至って好青年だな」

「まあなー」

「当たり前よ!」

 何故か葉坂が鼻を鳴らす。

「あの人は学年ぶっちぎりの優等生! 松尾花の付き人として編入し、一年であらゆる運動部に助っ人をしていたわね。彼が副会長職に就いて誰も文句言わなかったのはそこかしらね」

「へー、そー」

「…ユウ兄、どーでも良さそーだね」

「ま、あいつの眼鏡に敵わなかった、てことだな」

 こいつ平穏平穏って言うが、他者の不幸を好む奴でもある。対して対象は好青年。多分飽きてきたんだろう。

 まあ、好青年とか関係ないが。だってこの尾行って『思い人』を見つけるためのやつだからな。


「あ、ユウ兄! あれ」

 運動場を後にした島釜を追い、オレたちは今度は森にいた。

「…入ってっちゃった」

「まあ、執事だもんな」

 入ったのは豪邸だった。多分湧磨の態度的にここは『松尾邸』。ゴールしちゃったぞ、何もなく。

「でどーすんだ?」

「まーあ、ここまでかな。明日また探ってみるさ」

 湧磨はそういい踵を返す。

「なんだよ無駄足じゃねーか」

 とオレも踵を返し、


「ところで『剣道部』はいいのか?」


「……お前の今日の、本当のお節介相手はオレか」

 ピタッと足が止まる。

 湧磨は振り返り、

「お前せっかく剣道部に勧誘されてんだ。入ったらどーだ?」

「……お前にはカンケーねー」

 あいつは止まるがオレは歩く。

「オレは剣道はもうしない。……もう傷つけたくねーんだよ」

「そー言うがな、ノブキ」

 こいつが「キ」まで言う時は真剣で、オレは耳だけを傾ける。

「お前は強くなるべきだぞ。失う前に」

「……葉坂送ってく」

 足を早め、オレはその場を去る。

「……分かってるさ」

 あいつか、自分に呟く言葉は、今は誰にも届かない。

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