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それぞれの一日・リコとナミとシンディ

「へ〜、【客船がオーストラリア沖で謎の環礁に接触。あるいは巨大生物の可能性も】か〜。本当に巨大生物だったら面白いんだけどな〜。」

「リコ。あんた何やってんの?」

「何って、新聞読んでんだよ。」


 ここは鳳町にある籠目高校の1年生の教室。そこには籠目中学を卒業し、高校生になった椎名七海ことナミ、そして工藤絵里子ことリコの姿があった。

 地球の命運を賭けた、あの最後のウォーカーフィールドでの事件が終結してから、月日はおよそ2年の時が経過している。あれから運命を共にした仲間たちはそれぞれの人生を自分なりに選択し、相変わらず神酒やティムに絡んだ記憶は残ってはいないものの、その先にある未来の姿を思い浮かべながら日常を送っていた。

 その結果瞬と輝蘭は将来の目標のために大学付属高校への進学を選び、七海や絵里子とは別の学び舎での生活となっているのだが、それでも離れがたい絆を持っている4人は事ある毎に顔を合わせ、今も変わらぬ信頼関係を続けている。

 ちなみにその度に詩織や真夢もよく顔を見せている。彼女たち2人は現在小学6年生で、卒業を目前に結構忙しい日々を送っているが、やはり離れがたい気持ちが大きいのだろう。特に最近は詩織が趣味で執筆している物語がネタになり、以前より顔を合わせる機会が増えているようなところもあった。


「新聞読んでるのは見れば判るわよ。学校の教室に新聞持ち込んでるなんて、リコぐらいのものだよ。」

「いいじゃん。勉強熱心って言って。」


「あ〜リコ。やっぱりあんたは変わり者だね。」

 するとそこに、1人の同級生の少女が現れた。少女は黒髪や少し茶色がかった髪の生徒のみの教室の中で、非常に目立つ金色の髪をたなびかせている。しかしそれは決して染めたものでは無く、彼女が天然に持ち合わせているもの。

 少女はなんの違和感も無く七海と絵里子に近寄ると、彼女たちの傍にある椅子に腰を下ろした。


「あ、おはよう。シンディ」

「オハヨ、ナミ。」


 彼女の名前はシンディ香楽(かぐら)。七海たちと同じバスケ部に所属する強化選手の一人で、鳳町では無く美鷹市出身のハーフの学生である。

 実は彼女は元々美鷹市の高校を受験するつもりだったが、ある事件を境に七海や絵里子との縁が生まれ、バスケ部のキャプテンとして鳴らした実力を武器に、籠目高校のバスケ推薦入学の枠を見事に射止めていた。そのせいで古くからの友人だった子音(ねおん)緋色(ひいろ)とは離れ離れになってしまったが、実はこの2人の間の関係が急速に深まっていった経緯もあったため、少し居場所に困ってしまったこともあり、あえてこちらでの生活を選んでいたのだった。

 

 絵里子は香楽に軽く右手を上げて応えたが、逆に香楽は絵里子に興味深々の様子で近寄っていく。しかしよく見ると彼女の興味は絵里子では無く新聞にあったようで、香楽は彼女の後ろから同じ記事に視線を送ると、ニッコリとして絵里子に声をかけた。


「リコ。あんたこの【クラウン・オブ・ジ・アース号】の事件に興味あるの?」

「まあね。ぶつかったのが環礁ならどうでもいいけど、相手が巨大生物だったら興味あるじゃん。」

「ふ〜ん。まあリコらしいと言えばリコらしいよね。」

「批判は受け付けないよ。さあ勉強の邪魔だから、あっちに行った行った。」


「へ〜、そういう態度取るの。私の知り合いの人が、この事件の時にこの船に乗っていたんだけどな。」

「え?」


 絵里子は急に表情が変わり、驚いたように香楽の顔を見た。逆に香楽は非常に得意そうな顔をして、どこか勝ち誇ったような雰囲気で彼女を見ている。


「私、新聞にも載っていない情報持ってるよ〜。」

「え?マジ?どんなの?」

「あ、リコの勉強の邪魔しちゃ悪いか。ねえナミ」

「くぉらシンディ〜!!」


 一通りじゃれあった3人は、とりあえず香楽の話を聞くことにした。彼女の話によると、【クラウン・オブ・ジ・アース号】に乗っていたのは香楽の父の友人のバーデン夫妻で、夫妻はこの事件の際には特に目撃したものは無かったが、一緒に乗り合わせた友人夫妻が巨大な頭足類(タコやイカの仲間)の姿を見ていて、船内で一時ちょっとした噂になったのだという。


「タコ〜?6万tクラスの客船をグラつかせるような、そんなデカいタコがいるか〜?」

「んじゃリコ。リコはなんだと思っていたの?」

「ん〜、てっきりクジラ人間か巨大宇宙生物かと。」

「・・・そっちの方が有り得なく無い?」


 そして、やがて時間は朝のホームルームを迎えた。

 南向きの窓を持つ教室には朝の爽やかな光が差し込み、一日の始まりを告げる小鳥たちのさえずりが生徒たちの耳に心地良く届く。軽やかなチャイムが彼女たちの心に授業への意気込みを芽生えさせ、そして教室に担任の教師が笑顔で迎えられた。

 

 この日も本来は、いつもと変わらぬ日常がスタートするはずだったが、今日は一つだけ違っている出来事があった。

 朝のホームルームの時間に、1週間後に転校生がやって来ることが告げられたのである。

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