雨の上がったのちに
梅雨の話。
梅雨が外に雨を降らすなか、私はずっと家にこもっていた。それでも空気だけは外と繋がっていて、たっぷりと湿気を含んだ風がどこからか吹いて、べたりと肌を不快に撫でた。
意識しなくとも滲んできた汗は湿った風とあいまって不愉快さを助長した。
椅子に座り本を読むと言う、普段ならば快い動作がどうにも気だるかった。心なしか本が重いように感じた。行をなぞる目の動きも古びた自転車のチェーンのように空回りし、いたずらに時間が過ぎていくだけだった。
私は本を閉じた。両目を押さえて軽く首を横に振った。肺に入っていた空気を全て吐き出さんばかりにため息をついて、立ち上がった。
窓のそばに寄った。びしりと結露したガラスに触れると、そこから一斉に露が意思をもったように集まって垂れていった。
いつまで立ったままだったか、気づくと雨は止んでいた。――外へ出るか――と思い立って、ドアを開けた。
外の風はひんやりとしていた。乳白色の雲の間からは淡青色が覗いていた。その対比も――まあ、いいかな――と思った。
少し頬を緩めながら下を向いた。水たまりが泥を溶かして濁り茶色に染まっていた。
やはり雨は好かないなと苦笑した。
ありがとうございました。