部屋
震える秒針
積み上げられたビニールの軋み
すえた臭いは部屋をゆっくり腐らせている
小さな手は小さな身体を
覆うことで精一杯で
いつ笑ったか
いつ泣いたか
いつ怒ったか
黄ばんだ天井に映し出された
数コマは消えてゆき
おそれる力も消えてゆき
小さな手はザクロになって
細かくひび割れていた
食むことができなくなった口も
朽ちていくには早すぎる
小さな身体に小さな虫が這ってゆく
水道の蛇口から水が玉になって
ポトリと落ちた
悪い子だったから
お父さんお母さんは出ていってしまったの?
ポトリと落ちた声を
静寂が食んだ