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心の中を秋の夕立が駆け抜けるような思い

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「健ちゃん。

下手くそ…それじゃ駄目よ」



「ご……ゴメン」


「フニャフニャじゃない」



舞の部屋から漏れてくる話し声に、思わず聞き耳を立てた。


(二人で何を?……)



「健ちゃん、それじゃ入れる事は出来ないわ」



「唾をつけて、しごいてシャキッとしないとね。

あたしが持っててあげる。

あれっ右の手の平の小指の付けねにイボがあるよ」



「健ちゃんはピアノも勉強も凄いからなんでも出来ると思っていたけど……」



「今度は大丈夫」



「そう……ゆっくりと入れて……」



舞が嬉しそうに呟いた。


「要領さえわかれば、これからは、バッチリ」


健が得意そうに、そう言った。



ドアが威勢よく開けられた。




「あなた達……」



「ゴメンなさい……」



「健ちゃん、どうして謝るの……お母さん……ビックリするでしょう

……ドアはノックして……もぅ信じらんなぃ」



「ゴメンね……勘違いして」



舞の母親がバッの悪そうな口調でそう言った。



「健ちゃん初めてでしょう。

慣れないうちは」


(バカね。変な想像をして……私ったら)



健ちゃんから針と糸を受け取りながら、苦笑いしている母親を舞は可愛いと思った。



その情景を見ているリルの心の中に、針の冷たさを伴った不思議な感触が蘇ってきた。



(感触と共に蘇るこの感情は何?

懐かしくて……それでいて、心の中を秋の夕立が駆け抜けるような思い。


そして春のワルツを舞っている時の思いなど。

複雑な感情が交錯して胸が苦しい……誰か……教えてぇ……)



突然、リルが頭を抱え荒い呼吸になった。



田村がリルの額に左手を当て、

「私が三つ数えるとあなたは一気に深い井戸の中から浮上します。


…1…2…3…

あなたは時間旅行をしたので疲れています。


あなたの好きな、天使のプレリュードの演奏が終わるとあなたは、

すっきりと気持ちよく目覚めます」



「社長」


「沢田君、ここは会社じゃないから田村でいいよ。

それに私は君のフアンだから」



「はい田村さん。どうして天使のプレリュードを?……」



沢田が小首を傾げながら尋ねる。



「天才ピアニストがどうして私の会社に入社したのか。


ピアノコンサートの最後に何故、天使のプレリュードを弾くのか?


私を侮ってもらっては……それにしても君は数奇な人生を歩んで来たなぁ……

君が健ちゃんでリルが舞なんだろう。


君のネーミング《天使の舞》と天井に満天の星のイルミネーションそして白いグランドピアノを設置したアイデア(赤・白・黒・金・銀で高級感を演出した室内の配色)でチエーン店が10店に成長した。


最初は君の空いてる時間にピアノを店で弾いてくれればよいという事だったがね。


今では唯一信頼できる私の相棒だ」



田村が微笑みながら呟いた。








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