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第四話:エミリー、牛さん、『遠隔操作』。

 今回は少し長めです。

 エミリー視点


 わたしは、『ACO』のサービス開始15分前にヘッドセットを被りログインしました。


 そして、初期設定を始めます。


 アバター設定は髪と肌の色、髪型しか選ばないのですぐ終わりました。名前は、現実の名前を少しかえて『エミリー』にしました。スキルは、もともと友人とパーティーを組む約束をしていたので、大体のことを自分たちだけでできるようにしようと、パーティーメンバーと相談して決めていました。


 初期設定が終わると、すぐにサービスが開始されました。


 私は友人たちと合流し、お互いにフレンド登録してから、まずは皆ソロでレベル上げをしようという話になり、また夜に合流しようということで別れました。


 私のメインウェポンは(ボウガン)です。そのため、まずはお店で矢を買わなければいけません。なので、NPCショップで「ボルト」と呼ばれる弓のものよりも太い、弩用の矢を、ゲーム開始時に貰えるお金の1万(ゴールド)のうち、1千Gを使って200本購入しました。


 その後私は、【第0エリア 旅立ちの草原】へと向かいました。ここの魔物は突進してくる兎さんと牛さんです。私はβテスターなのでそのくらい知っていて当然なのです。


 兎さんを順調に倒しながら、私はスキルのレベルを上げていきました。サブウェポンである短剣のレベルも上がり、幾つかのアーツも習得できました。


 ボルトの残りが少なくなり、一旦レベル上げを中断したとき、ゲーム内時間で7時間が経過していました。ついつい時間を忘れてしまっていたようです。


 ボルトの残りは14本、兎さんだけなら後4体は確実に倒せる数です、なのでボルトを使い切ってから町に戻る事にしました。


 その後、2体の兎さんを倒し、3体目を発見しました。ボルトの残りは9本で、外さなければこの兎さんを含め最低3体の兎さんが倒せそうです。


 私は、兎さんに狙いを定め、引き金を引きました。しかし狙いがそれ、ボルトは兎さんの頭上をし、兎さんの向こうに居た牛さんの足に刺さりました。


 まずいです。牛さんは初心者フィールドに居るにしては強く、また、厄介な特性を持っています


「ブモオオオォォォォーーー!!」


 ボルトが足に刺さった牛さんが、突然大きな声で吼えました。すると、遠くで草を食べる動きをしていた牛さん達がこちらに向かってきました。その数は5頭です。そうなのです、牛さんは攻撃をうけると仲間を呼ぶのです。


 完全に集まりきる前に数を減らさないといけません。私は急いでボルトの刺さっている牛さんに狙いを付けると、弱点である眉間にボルトを撃ち始めました。


 残っていた9本のボルトを全て使い、何とか最初の牛さんを倒すことが出来ました。


 しかしもう、呼ばれた5頭の牛さんは目の前です。ここで倒されれば、私はデスペナルティとしてしばらく戦闘が出来ません。そうなるとパーティーの皆さんに迷惑がかかってしまいます。


 しかし、今の私に5頭もの牛さんを倒すことは不可能なので、一目散に逃げ出しました。幸い、足の速さには自信がありました。そして、何とか攻撃を食らうことなく街が見えるところまで来た時でした。


 前方にプレイヤーと思われる人影が立っていたのです。このままではあの人を巻き込んでしまいます。しかも、こちらには気づいていない様子。いけません、私は急いで大声をあげてその人影に呼びかけました。


「そこの方~!逃げて下さーーい!!」


 声が聞こえたようで、こちらを見て一瞬固まったその人は私と同じ髪型をした男性でした。


 その人が何事かを唱えると、10メートルほど先に魔方陣が現れました。攻撃されるかと思ったとき、その男性がはっきりと聞こえる声で叫びました。


「魔方陣に飛び込んで!早く!!」


 そう言われてようやくその魔方陣が水色の光を帯びていることに気付きました。あれは空間魔法の魔方陣です。彼は私を助けようとしてくれているみたいです。


「ありがとうございます!」


 そう叫びながら私は夢中で魔方陣に飛び込みました。お礼の言葉は届いたでしょうか?


 次の瞬間、私は【始まりの町】の中央広場に立っていました。



























 タクト視点


「は?」


 いきなり逃げろと言われた僕は、取り敢えず声のした方を振り向いた。すると50mほど向こうに、5頭の【巨角野牛(ビッグホーンバイソン)】に追われているひとりの女性プレイヤーが居た。


 まず最初に思ったのは「あ、僕と同じ髪型だ」ということだった。そして状況を理解した時にMPKモンスタープレイヤーキルという単語が脳裏に浮かんだが、「逃げて下さい」と言われた以上それは違うだろう。となると完全にこれは事故ということになる。そこまで考え、僕は動きだした。


「『遠距離移転(テレポート)』【始まりの町中央広場】!オープン!!」


 僕の20mほど前に水色に淡く輝く直径2mほどの魔方陣が展開される


「魔方陣に飛び込んで!早く!!」


 僕が叫ぶと、女性――少女といった方が正しい様な子だった――はご丁寧に「ありがとう」と叫びながら速度を緩めることなく魔方陣に飛び込んだ。恐らく年下だろう、うん。


 少女が飛び込んだのを確認して、魔方陣を消した。


 何とか少女を助けることが出来たようだ。が、ここからが本番だ。


 僕の目の前には、何かを探すようにきょろきょろと辺りを見回している【巨角野牛】が居る。


 【巨角野牛(ビッグホーンバイソン)】は、2.5mほどの巨体に、人の胴体を簡単に貫けそうな鋭く尖った巨大な角を持った牛型の魔物である。攻撃方法は突進と頭突きだけであるが、攻撃力が高い。初期装備である現在、出来れば食らいたくはない。また、こいつらは攻撃を受けると仲間を呼ぶのである。

呼ばれて来た『巨角野牛』攻撃するとさらに…なんてことはないが、一度に約4~8頭は相手にすることになるだろう。初心者ゾーンでパーティー戦の練習用に居る魔物だ。ソロで相手にする魔物ではない。


 しかし、【巨角野牛】相手なら、『遠隔操作』や他のアーツの試し(じっけん)ができるだろう。そう思うと自然と笑みが浮かんでくる。


「ぶっ飛ばしてやる…!」


 『鑑定』を使い、【巨角野牛】の弱点を調べる。どうやら眉間のようだ。


 【巨角野牛】たちは、僕を見つけると一斉に突撃してきた。


「『ジャンプ』!」


 【巨角野牛】は巨体だ、その上5頭も同時に突進してきているため横に逃げるのは不可能に近い。なので、「軽業」のアーツ『ジャンプ』を使い上に逃げた。が、


「やばっ!?高さ足りない!!」


 このままでは、【巨角野牛】の角に足が当たってしまう


「オープン、「忍者刀」!『固定(ロック)』!!」


 僕は足元に忍者刀を呼び出し、魔法を使いその場に固定する。そして、その忍者刀をしっかりと踏みしめ


「『ジャンプ』!!」


 僕は【巨角野牛】より高い位置まで飛び上がった。


「クローズ「忍者刀」!オープン「散弾銃(ショットガン)」「短機関銃(サブマシンガン)」!!」


 【巨角野牛】に弾き飛ばされる前に忍者刀を回収し、背後に散弾銃と短機関銃をそれぞれ呼び出す。


 着地と同時に右手に腰のホルスターから抜いた拳銃(ハンドガン)を構え、まだこちらに背を向けている【巨角野牛】のうち1頭に照準を合わる。


「『固定』『ホーミングショット』」


 先程足場にした忍者刀と同じように魔法で散弾銃と短機関銃を固定する。発動キーワードを唱えると手に持つ拳銃と背後の散弾銃が緑色のライトエフェクトを纏う


「「散弾銃」セット」


 『遠隔操作』で散弾銃を選択し、手に持つ拳銃の引き金を引く。


 拳銃から吐き出された一発の銃弾は、緑色の光の尾を引きながら吸い込まれるように【巨角野牛】の後ろ足を射抜き、散弾銃から撃ちだされた緑色に輝く無数の弾丸は一旦広がってから、空中で軌道を変え(・・・・・)【巨角野牛】の体に四方八方から余すところなく襲いかかった。


 全身から黄色いダメージエフェクトを迸らせた【巨角野牛】は一瞬でHPが0になり、青いポリゴン片になって爆散した。


 【巨角野牛】たちが再びこちらを向き、また一斉にこちらに向かって走り始める。


「「散弾銃」セット!」


 再び散弾銃を選択し、タイミングを見計らい、今回はアーツを使わずに何も持っていない左手で引き金を引くアクションをする


 散弾銃の銃口から飛び出した大量の弾丸は、広がりながら進み、四頭の【巨角野牛】に降り注ぎ、全武器の中で最大であるノックバック効果で、その突進を止めた。


 一塊になって停止した(させられた)【巨角野牛】に再び左手を向け、狙いを定める


「「短機関銃」セット」


 短機関銃を選択し、指で引き金を引くアクション。


 バラバラとばら蒔かれた銃弾は【巨角野牛】に向かって飛んで行く。しかし反動で銃身がぶれて、結構な量の銃弾は【巨角野牛】達の後方へと消えていった。


 狙いをできるだけそらさないようにしながら、短機関銃をしばらく打ち続けたところで、連射が途切れた。「弾切れ」である


 僕は急いで左手を下ろし、右手に持った拳銃を【巨角野牛】に向ける。


「『精密射撃』『パワーショット』!」


 『精密射撃』が発動し、僕の両手が青い光を纏う。


 赤い光を纏った拳銃を、僕を弾き飛ばそうと走り始めた【巨角野牛】の内の1頭ーーの眉間ーーに向けて、引き金を引く。


 バンッ!と音を出して飛び出した銃弾は『精密射撃』の効果もあって、吸い込まれるように【巨角野牛】の眉間に命中した。


 赤いダメージエフェクトが閃き、散弾銃と短機関銃での銃撃で、三割程度削れていたHPゲージの残りが消し飛ぶ。


 ポリゴン片が爆散するのを視界に捉えながら、僕は目前に迫った3頭の【巨角野牛】に意識を移す。


 それは、もう既に避けることのできない位置まで来ていた。


「『近距離転移(ワープ)』!」


 僕の目の前と、数m先にいる【巨角野牛】達の後方に魔方陣が展開される。


 僕は目の前の魔方陣に飛び込んだ。瞬間、魔方陣が消え、そこを【巨角野牛】達が通り抜ける。




 魔方陣から飛び出した僕は、10mほど先にいる【巨角野牛】に手に持った拳銃を向け、アーツを発動させる


「『クイックリロード』『ホーミングショット』『遠隔操作』」


 拳銃と、先程、空中で呼び出し(・・・・・・・)【巨角野牛】達の頭上に浮いている(・・・・・・・・)散弾銃が緑色の光を纏い、同じように浮いている短機関銃の弾切れが回復する


 そして、『遠隔操作』を発動させ、引き金を引く。


 拳銃と散弾銃から吐き出された銃弾は、空中で軌道を変えつつ、1頭の【巨角野牛】に襲い掛かり、短機関銃の弾幕が2頭の【巨角野牛】に頭上から降り注ぐ。


 拳銃と散弾銃の無数の弾丸に撃たれた1頭は、1頭目と同じように、全身からダメージエフェクトを迸らせ、HPを0にして爆散し、2頭のHPゲージは半分を切り、黄色に染まっていた。


「『二連射』!」


 残っているうちの1頭の眉間に狙いを定め、『二連射』を発動させ引き金を引く。


 一発目は眉間に命中したが、二発目は一発目の反動で狙いがそれ、肩に着弾した。


 黄と赤のダメージエフェクトが閃き、HPゲージが減少し、赤色に染まる。


 しかし、【巨角野牛】達はそれに怯むことなく2頭同時に突進してきた。


 HPゲージが赤くなっている方の【巨角野牛】に拳銃を向け、撃つ。左の前足に着弾した銃弾は残り僅かになっていたHPを容易く削り取る。


 ポリゴン片が爆散するのを見届け、最後の1頭に拳銃の銃口を向け引き金を引いた。が


「やば!弾切れ!?『クイックリr……ガハァ!」


 【巨角野牛】の突進を真正面から食らい、吹き飛ばされる。


 『ACO』に痛みはないが、その代り衝撃を感じるように出来ている。


 受けた衝撃に一瞬意識が朦朧としたが、すぐに起き上がる。


 初めてのダメージだな…とそんなことを考えながら自分のHPゲージを確認する。今の一撃で危険域(レッドゾーン)まで低下している


「次は無いな…」


 MPゲージは表示されていないため、後どの程度アーツを使えるかは分からない。しかし、アーツや魔法を乱用したので、あまり残ってはいないだろう。なので、『ステップ』や『ジャンプ』での回避をあてにすることは出来ない。つまり、一撃で倒さないと危ない可能性がある。


 MPは残り僅かだろうと思うが、あとひとつ武器を呼び出すくらいなら出来るだろう。


「オープン「狙撃銃」!『ロック』!!」


 無事、僕の左斜め後ろに「狙撃銃」が出現する。


 まだ3割程度HPゲージが残っている【巨角野牛】を一撃でを倒すには「狙撃銃(コレ)」しかない。


 弾き飛ばされたおかげで十分な距離が出来ている。こちらに向かって再び走り出そうとしている【巨角野牛】に左手を向け、眉間に狙いを定める。


「『遠隔操作』「狙撃銃」セット!」


 【巨角野牛】が走り始める


 引き金を引くアクション。ズドン!という拳銃とは比べ物にならない大きな発砲音がした。


 撃ち出された銃弾は【巨角野牛】の眉間を貫き、赤いダメージエフェクトを閃かせHPゲージを消し飛ばした。


「クローズ「散弾銃」「短機関銃」「狙撃銃」」


 青いポリゴン片が爆散するのを見届け、銃をしまう。


 周囲を見渡すが、近くに敵は居ないようである。それを確認し、


「あ~~、つっかれたーー!」


 背中から草原にダイブし、伸びをする。ゲームなので肉体的な疲労は無いが、精神的な疲労はある。むしろ、肉体的な疲労が無い分現実よりも感じやすいだろう。


 しばらくそうしてそれを見上げていたが、視界の端に危険域まで減少したゲージと、先ほどまで存在しなかったもう一つの空っぽのゲージを見つける。


「ん?何だこれ?」


 確認したところ、どうやらMPゲージらしい。どうして出現したのか、全く分からないが、MP残量が分かるというのは嬉しい。原因は後で妹に訊こう。


 そこまで考えたところで、


「ああ!忘れてた!!」


 先ほど町に送った少女のことを思い出す。とりあえず、無事の確認くらいはした方が良いだろう。


「『テレポート』【始まりの町中央広場】!」


 しかし魔法は発動しなかった。


「MPが無い!」


 仕方ないので、しばらくその場でMPが回復するのを待ってから再びテレポートを使い町の戻った。

戦闘描写って難しいですね。タクトがこんなに簡単に弱点を撃てるのは、弱点が眉間である上に、牛さんが頭を向けて突っ走ってくるからです。


誤字脱字等ございましたら、お知らせください。


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