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コール・マイ・ネーム  作者: 大原英一
第1章 現実と連日
8/29

8

「それにしたって……」

「いや、タキオカさんを交えての男子会は、先週やりました」トミタさんがビールに口をつけつつ言った。「今日はキレイどころをお呼びしての、第二弾です」

「その第二弾とやらに彼は呼ばれなかったの?」

 キレイどころと言われて、アタシは満更でもなかった。

「タキオカさんがきたら、たいへんですよ。エロ・トーク満載ですよ?」

 オオカワが満面の笑みで言った。こんなに楽しそうな彼は見たことがない。まあ、これまで数回しか会ったことがないし、話題も彼の問題ばかりだったから、仕方ないか。

「あなたたち、飲むとそんな話ばっかしてるんでしょう」

『タキオカさんです』

 ふたりは声をそろえて言った。いいコンビである。


 焼き鳥はどれも美味しかった。阿波尾鶏とかいう鶏を使っているらしい、よくわからないが。

 最初にでてきた、ささみの串焼きがやたら美味しかった。ささみ肉って、パサパサしたイメージがあるが、これは柔らかくジューシーだった。上に乗ったわさびがまた、いい主張をしていた。

 飲み放題のコースだったので、品数はそれほど多くなかったが、これで充分だった。アタシもオオカワも酒豪なので、飲み放題でなければトミタさんの支払いが可哀相だ。


「オオカワさんて、以前ウチの会社で営業やってらしたとか」

「ふはは、昔の話です」

 オオカワは照れ笑いした。

「師匠のインパクトは凄かったですよ」

「やめてよトミタさん。オレの営業成績聞いたら、びっくりしちゃうよ?」

「凄かったんですか」アタシは訊いた。

「悪い意味でね」

 たしかオオカワが営業をやっていたのは、一年たらずだとトミタさんは言っていた。成績が振るわなければ営業職を続けるのは難しい。

「それで派遣される側へまわったんですか」

「まあ、すぐにではないんスけどね。先輩に誘われてベンチャーとか、かじったりしてみたけど、やっぱりそれもダメで。で、作家でも目指そうかなーって考えていたところ、マンパラさんに仕事を紹介してもらったんです」

「あれ、師匠の最初の現場って何でしたっけ?」

「半導体、新横浜の」

「ああ、はいはい!」

 トミタさんは懐かしそうに笑った。

「それで、あのあとトミタさんも辞めたんだよね?」

「そう。実家に帰らなくちゃいけなくて」

「なんでまた、東京こっちに出てきたの?」

「まあまあ師匠、そのへんはイイじゃないですか」


 お酒が入ることで、ふだん聞けないような話が聞けて面白い。ふと、オオカワがアタシのほうを見た。

「剛流さんは、マンパラは長いんですか」

「まる五年です。オオカワさんのシステム・イーの(派遣期間の)ほうが長いですよ」

「あ、そうなんだ。……スミマセン、あの現場ではご迷惑ばかりおかけして」

 アタシは慌てた。べつに責めるつもりで言ったのではない。でもまあ、せっかくだから訊きたいことを訊いてしまえ。

「ちょっと興味があったんですけど、どうしてまた、オペレータを辞めてオペレータを?」

「おっと、直球できましたね師匠」トミタさんがニヤニヤする。


「オレはたぶん、派遣が好きなんです」

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