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コール・マイ・ネーム  作者: 大原英一
第1章 現実と連日
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 ウチの会社『マンパラ』は、東京・神田にある本社のほかに、横浜にも支社がある。支社はそこ、ひとつだけだ。

 アタシは入社以来ずっと本社勤務だが、一年くらいまえから横浜支社に気になる男がいる。

 彼の名はトミタジュンイチ。年齢は三五だからアタシより五つ年上か。背が高く童顔で、アタシ的にはかなりイケている。お腹まわりは年相応に、ちょっと目立ちはじめているが、まあ許容範囲だ。つーか、あまり贅沢も言ってられない身分なのでアタシも(笑)


 しかし、いかんせん、普段はオフィスが別なのであまりお会いする機会がない。月一の定例会議で横浜チーム(総勢で四人しかいない)が本社にくるときだけしか、会えない。

 彼とお酒を飲んだことも二、三回ある。もちろんサシではなく会社の連中も一緒だ。しゃべってみると、かなり気さくで、これまたイイ感じである。

 彼には、とある秘密がある。

 いや、むしろ公然の秘密なのだが、トミタさんはいわゆる「出戻り」なのだ。七年くらい前までウチの会社にいたらしい。つまりアタシよりも先輩だ。

 家庭の事情で一度マンパラを辞めて、富山県のご実家に戻っていたそうだ。それが、これまたどういう事情か、去年ふたたび上京してきた。

 横浜の支社長がじつはトミタさんの同期で、離職後も彼と連絡をとっていたらしく、彼を古巣へ誘ったというわけだ。

 正直、三四歳(当時)という年齢で人材派遣の営業職に出戻るというのは、なかなか勇気がいると思う。が、そこは昔とった杵柄、トミタさんはあっちゅう間に横浜支社の戦力となっている。


 今日はその月一の定例会議の日だ。トミタさんに会えるのでアタシのテンションは否応なしにあがっている。

 一八時くらいからパパッと、しょうもない数字(売り上げ)の発表を済ませて、たぶんその後は飲み会への流れとなるだろう。

 あ、そういえば今月は、問題児スタッフのオオカワエイジが退場になったことで、アタシのチームの売り上げも下がっているんだった。

 ちくしょー、よりによってトミタさんの前でマイナス発表かよ……。


 一七時半。横浜チームの面々が本社に到着した。

 お目当てのトミタさんも、もちろん、いる。彼は同期のカワグチさん(横浜の支社長)と冗談を言い合ってご満悦の様子だ。

「あ、剛流課長、お疲れさまです」

 トミタさんが笑顔で近づいてきた。あっ、はいー、と思わず声がうわずる。

「聞きましたよ。オオカワ師匠、やらかしたみたいですね」

「えっ」ぽかんとするアタシ。「オオカワエイジをご存じなんですか?」

 彼は笑顔で頷いた。

「あの人、むかしウチの営業やってたんですよ」

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