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コール・マイ・ネーム  作者: 大原英一
第1章 現実と連日
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 アタシの名前は剛流ごうりゅう まい。剛流なんて、ごっつい苗字だけど、そこそこキレイな顔をしてると思うし、スタイルだって悪くない。つい先日、三十路に突入したことも、いまだに結婚を経験していないことも、ついでに彼氏がいないことも、さほどアタシは気にしてない。毎日がわりと忙しく、それなりに充実している。きっと、こういうのをリア充というのだろう。違うか(笑)


 アタシは中小規模の派遣会社に勤めている。ハケンされるほうではなく、するほうだ。別にどちらが偉いというわけじゃない。どちらが欠けても、成り立たない商売なんだから。

 うちの会社『マンパワー・パラダイス』(通称・マンパラ)に、アタシは中途採用で入った。ここよりも大きなシステム会社に新卒で就職したのだが、あの地味な業界がダメで三年で辞めてしまった。

 二五歳のとき、アタシはマンパラの門戸をたたいた。あれからもう五年だもんなあ。

 営業の経験なんて、もちろんなかった。学生時代にマクバでバイトしていたけど、あれは販売だったしな、ハンバーガーの。

 でも短くてもシステム業界にいたことで、ハケンの需要があるってことだけは肌身で感じていた。

 だから、やれると思った。

 あれから五年、アタシはいい感じで売り上げを伸ばし、今ではいちグループの課長をまかされている。肩書きなんて別にどうでもいいのだが、ある程度勤めていれば、いつかは廻ってくるお役目なのかもしれない。


 それにしても、リーマン・ショック以降、景気のいい話などそうそう落ちているものじゃない。「ハケン切り」という言葉が世間で流行ったように、うちのスタッフも現場から契約を打ち切られたケースは多々あった。

 アタシは管理職という名目にかこつけて、営業の現場からは少し遠ざかっていた。だって契約が獲れる気がしないし(笑)

 いやいや、課長のアタシがそんな弱気でどうする。いまだってアタシの可愛い下僕……じゃなかった部下たちが、必死で頑張っているのだ。

 ほら見てよ、アライ君のあの真剣そうな……って、アライ君?

 アライ君が死にそうな表情で電話している。高確率で現場(お客さん)からのクレームっぽい。

「どうしたの、アライ君。顔がつらそうだよ?」

 受話器を置いた彼に、アタシは声をかけた。

「課長ー、スタッフのオオカワさん……もうダメっぽいです。お客さん、カンカンです」

「あー、あの問題児スタッフね」

 オオカワというスタッフには、アライ君の付き添いで二度くらい会ったことがある。ちょっと、というかだいぶクセのあるスタッフだ。

 小柄で派手な感じはまったくしないのだが、眼光が鋭く、かなりズバズバとものをいう。オオカワとはそんな人物だった。

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