私を照らす月。
今日は満月だ。
街灯がなくても明るい。
私に影ができている。
月が私を照らす。
雲はとぎれとぎれにある。
雲のまわりが光っている。
月に雲がかかった。
月にかかっている雲のまわりは虹色に光っている。
今だ。
今行かなければ。
逃げなければ。
私は走る。
月が私を照らさないうちに。
雲。
まだ月を隠していて。
私をもっと隠していて。
薄暗い中、私は走る。
何から逃げているのか、忘れてしまいそうなくらい、狂ったように走る。
雲から月が顔をだす。
私に影ができる。
辺りが明るく照らされた。
私は木の影に隠れる。
結ばれない私と彼。
決意し、今日二人で心中することに決めた。
しかし、いざとなると死ぬのは怖い。
死んだ後なにになるのか。
死んだ後も、彼と出会えるのか。
私は怖くて逃げ出した。
満月の夜に。
彼は狂ったように追ってくる。
違う。
彼を捨てたわけじゃない。
他になにか道があるはず。
他になにか一緒になれる方法があるはず。
わかって。
わかって。
月が雲に隠れる。
辺りが暗くなる。
私は逃げる。
でも、もう疲れた。
愛している彼から逃げることに。
私は止まった。
月が顔をだした。
私に影ができる。
月が私を照らす。
彼が私を見付ける。
「見つけた。」
彼が言う。
「私、あなたのこと愛してるよ。今までも、これからも。」
そう言った私に、彼は笑って言う。
「わかってる。」
彼は私に微笑みながら手にもったオノを振り下ろす。
そして自分のノドにふりかざした。