第77話 「選択」
“通じた”。
その事実は、奇跡よりも重かった。
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言葉ではない。
音でもない。
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だが――
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“意図”が届いた。
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「……」
裂け目のこちら側。
そこに立つ個体。
その目は、もう迷っていなかった。
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アレンを見る。
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ただ見るのではない。
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“問いかける”。
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「……」
リリアが息を呑む。
「……来ますね」
エルミナが静かに言う。
「ええ」
「本格的に」
セリスが低く言う。
「……対話開始」
ノアが笑う。
「ここからが本番」
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個体が、ゆっくりと動く。
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手を上げる。
そして。
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“示す”。
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地面。
火。
空。
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順番に。
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「……」
「……何これ」
リリアが呟く。
エルミナが静かに言う。
「……構造の提示です」
セリスが低く言う。
「……世界の説明」
ノアが笑う。
「自分たちの理解を見せてる」
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地。
火。
空。
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現象。
意味。
そして――
“その上”。
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個体が。
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アレンを指す。
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「……」
空気が止まる。
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「……来た」
リリアが小さく言う。
エルミナが静かに続ける。
「ええ」
「核心です」
セリスが低く言う。
「……定義の要求」
ノアが笑う。
「神って何?って聞いてる」
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個体が、再び声を発する。
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長く。
強く。
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問い。
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“お前は何か”。
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「……」
アレンは、黙る。
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逃げることはできない。
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誤魔化すことも。
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もう。
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できない。
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「……」
リリアが小さく言う。
「……答えるんですか?」
エルミナが続ける。
「ここでの答えは」
「世界の定義になります」
セリスが低く言う。
「……不可逆」
ノアが静かに言う。
「ねぇ」
「どうする?」
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沈黙。
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アレンは、空を見る。
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そして。
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下を見る。
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彼らは。
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ここまで来た。
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自分たちの力で。
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戦い。
理解し。
変わり続けて。
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「……」
小さく息を吐く。
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そして。
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言う。
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「……俺は」
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空間が、揺れる。
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言葉ではない。
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“意味”が流れる。
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「……お前らを作った」
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それは。
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初めての。
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“明確な宣言”。
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「……っ!」
リリアが息を呑む。
エルミナが目を見開く。
セリスが低く言う。
「……創造者の定義」
ノアが笑う。
「言っちゃったね」
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個体が、固まる。
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そして。
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ゆっくりと。
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反応する。
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驚きではない。
否定でもない。
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“理解しようとする”。
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「……」
再び、声を発する。
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短く。
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だが。
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強く。
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「……」
「……何て言ってるんですかね」
リリアが呟く。
エルミナが静かに言う。
「……確認です」
セリスが低く言う。
「……関係性」
ノアが笑う。
「支配か、共存かってね」
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個体が。
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手を動かす。
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上を指す。
下を指す。
そして。
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横に広げる。
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「……」
「……三択?」
リリアが言う。
エルミナが頷く。
「ええ」
セリスが低く言う。
「……支配、服従、並列」
ノアが笑う。
「シンプルだね」
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アレンは。
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その動きを見て。
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理解する。
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そして。
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少しだけ。
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笑う。
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「……いい質問だ」
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沈黙。
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全員が、待つ。
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答えを。
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世界の形を決める。
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その一言を。
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「……」
アレンが。
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ゆっくりと。
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手を動かす。
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上でも。
下でもない。
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横に。
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広げる。
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「……並ぶ」
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“共存”。
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「……っ!」
リリアが息を呑む。
エルミナが静かに微笑む。
セリスが低く言う。
「……選択された」
ノアが笑う。
「いいね」
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個体が。
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その動きを見る。
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そして。
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同じように。
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手を広げる。
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「……」
理解した。
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完全ではない。
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だが。
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十分に。
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“通じた”。
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下では。
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他の個体たちも。
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同じ動きをする。
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広げる。
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繋がる。
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広がる。
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「……」
リリアが小さく言う。
「……これ」
「決まりましたね」
エルミナが頷く。
「ええ」
セリスが一言。
「……共存」
ノアが笑う。
「いいエンドだね」
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アレンが、空を見る。
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そして。
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小さく呟く。
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「……ここからだ」
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世界は。
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終わらない。
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続く。
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神と人。
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並んで。
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進む。
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――第77話 完




