第57話 「信じる者、疑う者」
世界は、静かに二つに割れていた。
森の中央。
あの“最初に見上げた個体”を中心に――
集団が形成されていた。
「……増えてるな」
アレンが呟く。
跪く個体。
手を合わせる個体。
同じ音を繰り返す個体。
「……完全に組織化してます」
エルミナが言う。
リリアが顔をしかめる。
「もう“集団”じゃなくて」
「なんか……別のものになってません?」
セリスが低く言う。
「……統制が強い」
ノアが笑う。
「うん」
「これ」
「宗教だね」
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信じる者たち。
⸻
彼らは。
空に意味を見出し。
上に“存在”を感じ。
それを共有し始めていた。
「……言葉も変わってる」
エルミナが言う。
「同じ音が繰り返されている」
「祈りだな」
アレンが答える。
リリアが小さく呟く。
「……なんか」
「ちょっと怖いですね」
その時。
⸻
反対側。
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森の外縁。
もう一つの集団。
距離を取り。
空を見ない者たち。
「……こっちも増えてる」
セリスが言う。
ノアが頷く。
「うん」
「疑う側」
その個体たちは。
地面を見る。
資源を見る。
現実だけを見ている。
「……全然違う」
リリアが呟く。
エルミナが言う。
「価値観が分岐しています」
アレンが視る。
流れ。
未来。
「……来るな」
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接触。
⸻
信じる者たちが。
外へ出る。
疑う者たちに近づく。
「……あ」
リリアが息を呑む。
最初の接触。
最初の対話。
だが――
うまくいかない。
音は通じる。
だが。
意味が違う。
「……」
信じる者は、空を指す。
疑う者は、地面を指す。
同じ世界。
だが。
見ているものが違う。
「……理解できてない」
エルミナが言う。
セリスが低く言う。
「……価値の不一致」
ノアが笑う。
「いいね」
「これが文明」
その瞬間。
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衝突が起きる。
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押す。
拒む。
奪う。
「……来た」
アレンが呟く。
リリアが言う。
「止めますか?」
エルミナも続く。
「……ここは介入すべきでは?」
セリスが言う。
「……判断を」
ノアがアレンを見る。
「どうする?」
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静寂。
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争いは激しくなる。
だが。
まだ小さい。
まだ“芽”だ。
「……」
アレンが目を閉じる。
考える。
もし介入すれば。
争いは止まる。
だが。
その代わりに。
“選択”が消える。
もし放置すれば。
争いは広がる。
だが。
その中で。
“何か”が生まれる。
「……」
ゆっくりと目を開く。
「……今回は」
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「介入しない」
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リリアが小さく息を吐く。
「……やっぱりそうなりますか」
エルミナが静かに頷く。
「ええ」
セリスが言う。
「……妥当だ」
ノアが笑う。
「ちゃんと神してるね」
アレンが苦笑する。
「だからそれやめろ」
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その時。
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一体の個体が。
争いの中で――
倒れる。
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「……っ」
リリアが拳を握る。
だが。
動かない。
見ている。
ただ。
見届ける。
「……」
エルミナが静かに言う。
「これが」
「世界です」
セリスが一言。
「……避けられない」
ノアが呟く。
「でも」
「ここから変わる」
アレンが視る。
未来。
分岐。
そして。
「……来るな」
⸻
変化。
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争いの中で。
一体が。
別の個体を守る。
間に入る。
「……?」
リリアが目を見開く。
エルミナが息を呑む。
「……仲裁……?」
セリスが低く言う。
「……第三の選択」
ノアが笑う。
「ほら」
アレンが言う。
「だから放置なんだ」
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争いだけではない。
協力だけでもない。
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その間に。
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新しい選択が生まれる。
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それが。
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世界を進める。
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「……面白いですね」
リリアが笑う。
エルミナが微笑む。
「ええ」
セリスが頷く。
「……価値がある」
ノアが言う。
「ほんと」
「いい世界」
アレンが空を見る。
「……まだまだだな」
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信じる者。
疑う者。
そして。
その間に立つ者。
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世界は。
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さらに複雑になっていく。
⸻
――第57話 完




