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第42話 「上位層」

 空間が、裂ける。


 外縁層の“上”。


 さらにその先へ。


「行くよ」


 ノアが軽く言った。


 そのまま、一歩踏み出す。


 アレンも続く。


 リリア、エルミナ、セリスも。



 瞬間。



 “世界”が消えた。



「……っ!?」


 リリアが声を上げる。


「何これ……!」


 足場がない。


 空もない。


 だが落ちない。


 ただ、浮いている。


「……概念空間」


 エルミナが呟く。


「物理が成立していません……」


 セリスが周囲を見る。


「……戦いにくいな」


 アレンは静かに目を細めた。


「いや」


「むしろ分かりやすい」


 視界を開く。



【領域】

分類:上位層

状態:完全概念化

ルール:価値優先



「……なるほどな」


「全部“価値”で処理される世界か」


 ノアが振り返る。


「正解」


「ここは“現象”がない」


「全部、結果だけ」


「……は?」


 リリアが眉をひそめる。


「どういう意味です?」


「例えば」


 ノアが指を鳴らす。


 瞬間。


 リリアの剣が“振られた後”の状態になる。


「……え?」


「今、振ってないよな?」


「振ってないですね」


「でも結果だけ出る」


 ノアが言う。


「ここは“過程が消える世界”」


「……」


 エルミナが息を呑む。


「つまり」


「因果が短縮されている……?」


「そう」


「だから」


 ノアがアレンを見る。


「弱いと」


「何もできないまま終わる」


「……いいね」


 アレンが笑う。


「分かりやすい」


 その瞬間。


 空間が歪んだ。


「来る」


 アレンが言う。


 そして――


 “それ”が現れた。


 人型。


 だが。


 完全に“完成された存在”。


 無駄が一切ない。



【上位存在】

分類:調整層上位

状態:完全

危険度:測定不能



「……」


 全員が一瞬、言葉を失う。


 圧が違う。


 今までと明確に違う。


「……ノア」


 アレンが聞く。


「これ、どのくらい強い」


「普通に死ぬレベル」


「分かりやすい」


 リリアが笑う。


「燃えますね」


 セリスが剣を構える。


「ここが本番か」


 エルミナが魔力を展開。


「……行きます」


 上位存在が口を開く。


「侵入者確認」


「排除」


 その瞬間。


 “結果”が発生した。


 リリアの体が吹き飛ぶ。


「っ……!?」


「リリア!」


 エルミナが叫ぶ。


「今、攻撃してないぞ!?」


 セリスが目を見開く。


「……過程がない」


「だから防げない」


 アレンが静かに言う。


「厄介だな」


 だが。


 笑っている。


「でも」


「見える」


 視界を開く。


 結果。


 その“原因”。


 圧縮された因果。


「……ここだな」


 アレンが一歩踏み出す。


「因果を読む」


 上位存在が再び動く。


 いや。


 “結果が出る”。


 今度はアレン。


 だが――


「遅い」


 体をずらす。


 回避。


「……?」


 上位存在が初めて揺らぐ。


「見えてるからな」


 アレンは言った。


「結果の“前”」


「圧縮されてるだけで」


「消えてるわけじゃない」


 そして。


 手を伸ばす。


「触れる」



 因果に。



 ズレる。


 結果が崩れる。


 上位存在の動きが止まる。


「今だ!」


 リリアが復帰する。


「はあっ!」


 斬る。


 セリスが続く。


「斬撃!」


 エルミナが拘束。


「固定!」


 だが。


 まだ足りない。


「硬い……!」


 アレンが言う。


「階層が上だ」


「なら」


 視界をさらに開く。


 価値。


 階層。


 因果。


 すべてを重ねる。


「……これだ」



【統合認識】

状態:進化

効果:因果干渉可能



「……面白い」


 ノアが小さく呟く。


「そこ行くんだ」


 アレンが踏み込む。


 完全に“同じ領域”へ。


「終わりだ」


 手を伸ばす。


 直接。



 因果を握る。



「……っ!?」


 上位存在が初めて大きく揺らぐ。


「ここで」


「止める」


 アレンが言う。


 そして。


「切断」



 結果が消える。



 存在が崩壊する。


 完全消滅。



 静寂。



「……」


「……」


「……何それ」


 リリアが呟く。


「やばすぎません?」


 エルミナも言う。


「完全に領域が違う……」


 セリスが低く言う。


「……到達したな」


 ノアが一歩近づく。


 アレンを見る。


「……やっぱり」


「危険だね君」


「褒め言葉か?」


「半分」


 そして。


 少しだけ、真面目な顔になる。


「でも」


「ここから上は」


「本当に危ない」


「……いいね」


 アレンが笑う。


「じゃあ」


「もっと上行くか」


 リリアが笑う。


「当然です」


 エルミナも頷く。


「ええ」


 セリスが一言。


「進むだけだ」


 ノアが小さく笑う。


「……ほんと」


「止まらないね君たち」



 物語は。


 さらに上へ。


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