第14話 「価値の支配者」
光が収まった。
遺跡の中枢。
静寂。
アレンは立っていた。
手の中に――
神器。
淡く輝くそれは、先ほどまでとは違う存在感を放っていた。
「……アレン?」
リリアの声。
「大丈夫ですか?」
エルミナも不安そうに覗き込む。
アレンはゆっくり目を開いた。
「……見える」
「え?」
「全部」
視界が変わっていた。
壁。
床。
空気。
リリア。
エルミナ。
すべてに情報が浮かぶ。
だが今までとは違う。
“表面”ではない。
もっと奥。
本質。
⸻
【リリア】
現在能力:B+
潜在上限:SS
成長条件:高負荷戦闘・魔力共鳴
⸻
【エルミナ】
現在能力:B
潜在上限:S+
適性:魔導・支援・統制
⸻
「……すごいなこれ」
「何が見えてるんですか?」
リリアが身を乗り出す。
距離が近い。
顔がすぐそこ。
「お前の未来」
「は?」
「あとエルミナの才能」
「え?」
二人が固まる。
アレンは苦笑した。
「鑑定の上位互換みたいな感じ」
「それもうチートじゃないですか」
「自分でも思う」
その時。
足元の魔法陣が再び光った。
「っ!?」
「まだ何かあるのか!?」
だが。
アレンの視界が即座に反応する。
⸻
【遺跡崩壊】
進行:開始
脱出推奨時間:3分
⸻
「逃げるぞ」
「え?」
「崩れる」
「は!?」
リリアが即座に動く。
「出口は!?」
「こっち!」
アレンは迷わない。
完全に見えている。
最短ルート。
崩壊を避ける道。
「ついてこい!」
⸻
走る。
天井が崩れる。
石が落ちる。
だが。
「右!」
「はい!」
エルミナが即座に反応。
「ジャンプ!」
リリアが跳ぶ。
完璧な連携。
迷いがない。
アレンの指示がすべて正しい。
「すごい……!」
エルミナが息を呑む。
「完全に見えてる……」
「まぁな!」
その瞬間。
足場が崩れた。
「っ!」
エルミナがバランスを崩す。
落ちる。
だが。
アレンが腕を掴んだ。
「危ない!」
「きゃっ」
引き寄せる。
体が密着する。
柔らかい感触。
「大丈夫か?」
「は、はい……」
顔が近い。
かなり近い。
その瞬間。
ぐいっ。
リリアが引き剥がした。
「はいそこまでです」
「え」
「逃げるのが先です」
「それはそう」
だが明らかに機嫌が悪い。
「こっち!」
アレンが再び走る。
⸻
そして。
出口。
三人は飛び出した。
同時に。
背後で遺跡が崩れる。
ドォォォン!!
土煙。
静寂。
「……」
「……」
「……生きてる」
リリアが座り込んだ。
「マジで死ぬかと思いました」
エルミナも息を整える。
「完全に崩壊しましたね……」
アレンは振り返った。
遺跡はもうない。
「証拠隠滅みたいだな」
「偶然とは思えませんね」
エルミナの表情が真剣になる。
「誰かが意図的に……」
「その話は後だな」
アレンは座り込んだ。
「疲れた」
「それはそうです」
リリアが隣に座る。
そして。
自然に寄りかかってくる。
「ちょっと」
「疲れてるので」
「言い訳」
「言い訳です」
正直すぎる。
エルミナも少し迷って――
反対側に座る。
そして。
軽く肩に触れる。
「……私も少しだけ」
「いいけど」
結果。
また挟まれる形。
左右から体温。
柔らかさ。
距離が近い。
「……」
「……」
リリアがちらっと見る。
エルミナも視線を向ける。
そして。
同時に少しだけ寄る。
「ちょっと」
「何です?」
「何でしょう」
「近い」
「気のせいです」
「違う」
だが。
悪くない。
この空気。
この距離。
アレンは苦笑した。
「なぁ」
「はい?」
「なんですか?」
「これからどうする?」
リリアが即答した。
「もっと強くなります」
エルミナも頷く。
「そして真相を調べます」
アレンは空を見た。
そして。
手の中の神器を見る。
「……なら」
ゆっくり言う。
「全部見抜いてやるよ」
「この世界の価値」
リリアが笑う。
「頼もしいですね」
エルミナも微笑む。
「本当に」
その時。
遠くで。
誰かが動いていた。
視界に情報が浮かぶ。
⸻
【元パーティ】
状態:依頼減少・信用低下
崩壊進行:中
⸻
「……あいつら」
「え?」
「どうしました?」
アレンは小さく笑った。
「いや」
「順調に終わってきてるなって」
リリアがニヤッとする。
「ざまぁですね」
「まだ言う」
だが。
確かに。
物語は進んでいる。
上へ。
そして――
さらに面白い方向へ。
⸻
――第14話 完




