第13話 「真理の先」
遺跡の奥は、異様だった。
空気が違う。
重い。
息が詰まるような圧。
「……ここが中枢か」
アレンは立ち止まった。
目の前には巨大な空間。
円形の広間。
中央には――
一つの台座。
そこに浮かぶ、淡い光。
そして。
その周囲を取り囲むように刻まれた魔法陣。
明らかにただの宝ではない。
「……綺麗」
エルミナが思わず呟いた。
リリアも息を呑む。
「これ……ただの遺跡じゃない」
「うん」
アレンは頷いた。
鑑定を発動する。
⸻
【高位神器:名称不明】
ランク:SSS
機能:能力増幅・適性進化
状態:封印中
適合者:未確定
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「……やっぱり来たな」
「何が見えてるんですか?」
エルミナが聞く。
「神器」
「え……?」
「しかもかなりヤバいやつ」
リリアがニヤッと笑う。
「いいですね」
「完全に大当たりです」
だが。
アレンの視界にさらに情報が浮かぶ。
⸻
【守護機構:最終防衛】
状態:起動準備
危険度:A+
⸻
「……来る」
「またですか」
「今度は強い」
その瞬間。
魔法陣が光る。
空間が震える。
そして――
現れた。
人型。
だが石ではない。
黒い装甲。
禍々しい光。
「……ゴーレムじゃない」
「もっと上だ」
鑑定。
⸻
【古代守護騎士】
ランク:A+
特性:対侵入者殲滅
弱点:魔力中枢(心臓部)
⸻
「A+か……」
「倒せます?」
リリアが剣を構える。
「いける」
「弱点見えてる」
エルミナが魔力を高める。
「なら――やりましょう」
戦闘が始まった。
⸻
速い。
守護騎士の動きは、今までとは別格だった。
リリアが斬りかかる。
ガキィン!!
「硬っ……!」
弾かれる。
その瞬間。
反撃。
「っ!」
アレンが叫ぶ。
「左!」
リリアが回避。
紙一重。
床が砕ける。
エルミナが詠唱。
「――拘束!」
光の鎖。
だが。
バキッ。
引きちぎられる。
「強い……!」
だが。
アレンには見えている。
「心臓部!」
「そこだけ守り薄い!」
「了解!」
リリアが突っ込む。
だが。
届かない。
距離が足りない。
その瞬間。
「アレン!」
「え?」
「持ち上げて!」
「は!?」
リリアが足をかける。
体重が乗る。
そのまま肩に。
「うお!?」
「そのまま投げて!」
「無茶言うな!」
「いけます!」
信頼が重い。
だが。
アレンは踏み込んだ。
「行くぞ!」
全力で押し出す。
リリアが跳ぶ。
空中。
「はあああ!!」
一閃。
剣が突き刺さる。
ヒビ。
だが。
まだ壊れない。
「足りない!」
その瞬間。
エルミナが動いた。
「――魔力付与!」
光がリリアの剣に宿る。
増幅。
そして。
パリン!!
魔力中枢が砕けた。
守護騎士が崩れる。
ドォン。
静寂。
⸻
「……終わった」
リリアが息を吐く。
エルミナも肩で息をしている。
「連携……良かったですね」
「うん」
アレンは笑った。
「完璧だった」
その瞬間。
足元が揺れる。
「っ!?」
バランスを崩す。
アレンは咄嗟に二人を引き寄せた。
結果。
ドサッ。
三人で倒れ込む。
「……」
「……」
「……」
まただ。
しかも今回は完全に密着。
両側から押し付けられる柔らかさ。
距離ゼロ。
呼吸が混ざる。
「……アレン」
リリアの声が低い。
「はい」
「慣れてません?」
「慣れてない」
「本当に?」
「本当に」
一方。
エルミナは顔を赤くしながらも、目を逸らさない。
「……嫌ではないです」
「何が」
「この距離」
「え」
一瞬、空気が止まる。
リリアがピクッと反応する。
「……へぇ」
「そういうこと言うんですね」
じっと見る。
少しだけ鋭い視線。
だが。
どこか楽しそうでもある。
「私も嫌じゃないですけど」
「張り合うな」
「張り合ってません」
完全に張り合っている。
アレンはため息をついた。
「とりあえず離れて」
「仕方ないですね」
「はい」
名残惜しそうに離れる二人。
そして。
台座を見る。
神器が浮かんでいる。
淡い光。
呼ばれているような感覚。
「……行くか」
アレンは一歩踏み出した。
手を伸ばす。
触れた瞬間。
光が爆発した。
視界が白に染まる。
情報が流れ込む。
膨大なデータ。
世界の構造。
価値の本質。
「……これは」
鑑定が変わる。
深く。
鋭く。
そして――
本質へ。
光が収まる。
アレンは立っていた。
手の中に、神器。
リリアとエルミナが見ている。
「どうです?」
「何が分かる?」
アレンはゆっくり言った。
「……全部」
「え?」
「この世界の“価値”」
静寂。
そして。
物語は、さらに大きく動き出す。
⸻
――第13話 完




