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動き始めた交流

ルーミア村のエルフたちの暮らしにも少しずつ慣れてきたカズヤは、この日も村の外れにある訓練場に足を運んでいた。


目の前には、槍を構えたリシェルが立っている。


「カズヤ、しっかり集中しろ!隙がありすぎる!」


「へいへい……朝から元気だな……」


ぶつくさ言いながらも、カズヤは木剣を両手で構える。


ここ最近は毎朝、リシェルに稽古をつけられるのが日課になっていた。

リシェルはもともと戦闘民族の中でも腕利きの戦士であり、戦闘の基礎や体の使い方については的確に指導してくれる。


――が、容赦がない。


「遅い!」


リシェルが一歩踏み込み、槍の柄の部分でカズヤの木剣を打ち払う。


「ぐっ……!」


カズヤはバランスを崩しつつも踏ん張り、素早く距離を取った。


「いい反応。最初よりはマシになったな」


リシェルは満足げに頷くが、表情はまだ厳しいままだ。


「ありがとよ……」


汗だくになりながらカズヤは深呼吸する。

初日こそ殺気立っていたリシェルも、少しずつ態度を和らげてきた。カズヤが本気でこの村とエルフたちを守る気持ちがあると分かったからだろう。


「しかし……お前、変な技を持ってるな。昨日の斬撃、見たぞ」


「あれか。魔力を纏わせて斬っただけだよ。特訓中になんかできた」


「おかしいんだよな……普通、そんな短期間で感覚は掴めない。剣の素人だったはずなのに……」


リシェルは首を傾げつつも、何か納得したような表情で呟いた。


「ま、いいさ。どのみちまだ未熟。今日も徹底的に鍛えるぞ」


「マジかよ……」


ため息をつきながら、カズヤは再び木剣を構えた。


◇ ◇ ◇


訓練後、汗を流して食堂に戻ると、エリシアが食事の準備を終えていた。


「お疲れ様です、カズヤさん」


「エリシアさん……助かります……マジで腹ペコです……」


カズヤは席に着き、すぐに配膳された温かいスープと焼きたてのパンに手を伸ばした。


「本当に美味い……体に沁みる……」


「ふふ、食べる姿がまるで子供みたいですね」


エリシアが優しく微笑む。

以前は距離を感じていたエリシアの態度も、カズヤが村の生活に溶け込み、真剣に取り組む様子を見るうちに柔らかくなっていた。


「そういえば、明日からは村の見回りにも同行していただきます」


「了解。ついて行きますよ」


エリシアは少しだけ真剣な表情になる。


「この森の外れには魔物の影も見え始めています。何かある前に状況を確認しておきたいのです」


「なるほどね。俺も戦力にはなるだろうし、一緒に見回ろう」


「……ありがとうございます」


エリシアが控えめに頭を下げた。


このやり取りをリシェルが腕を組んで見ていた。


「……少しは役に立つようになってきたかもな」


素直じゃないが、リシェルなりの評価だった。


◇ ◇ ◇


翌日――。


カズヤはリシェル、エリシアと共に村の周囲を巡回していた。


エルフたちは弓を携え、動物の足跡や魔物の痕跡を探す。カズヤはその様子を観察しながら、自分も魔力感知の訓練を続けていた。


「魔力の流れを掴め……気配を読む……」


以前の特訓でも苦戦していた魔力の感知だが、地道に続けることで少しずつ感覚が掴めてきた。


リシェルは横目でそれを見て小さく呟いた。


「アイツ……吸収が速いな。普通なら半年はかかるのに……」


カズヤは必死だった。

エルフたちが自分を信頼し始めた今、彼女たちの期待を裏切りたくなかった。何より、この穏やかな村と人々を守りたいと心から思い始めていた。


その時――


「……!」


カズヤは足を止めた。


「どうした?」リシェルが身構える。


「……気配がある。前方、森の中……かなりの数」


一瞬の緊張が走る。リシェルも感覚を研ぎ澄ませた。


「……本当だ。嫌な気配がする。距離は近い」


エリシアが慎重な声で言った。


「カズヤさん、戻りましょう。村へ報告しないと」


「いや……まずは確認する。村に被害が出る前に」


リシェルも頷く。


「お前、無茶はするなよ」


「心得てる」


カズヤは剣を腰に携え、静かに森の奥へと踏み出した。


(……本当に俺は、強くなれてるのか?エルフたちを守れるのか?)


心の中で自問しながら、目の前の試練に向かっていく。


◇ ◇ ◇

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