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大魔導士、異世界の洗礼を受ける。

青年がサボテンキメラと握手を交わしていた頃、リオネ宅では………



リオネとシオウは丁度、夕食を頂いていた


「もきゅもきゅ…………あんま美味しくないけど……鉄分とかの栄養の為にしっかり食べないと…」


リオネは、先程から一切食べる様子のないシオウを見て、皿に乗せられた肉塊にがぶがぶと噛み付きながらシオウにそういう


「……あ、あぁ………そう…だね…………………それじゃ…頂くとするよ……」


リオネにそう言われ、観念したように木製のナイフとフォークを手に取り、肉塊を一口大に切り分ける


「…………」


切り分けた肉塊と数秒、にらめっこした後、シオウは意を決してそれを口に運ぶ


口に運んだ瞬間に広がる血と獣の臭い、それを掻き消そうと襲いかかる胡椒の強烈な辛味と刺激そしてゴムのように硬く、噛み切れない肉と、噛めば噛むほど深くなっていく獣臭


「…………!!!……………!?…………?………!!………………」


噛み続けること数十秒、何度も吐き出しそうになるのを堪えながらも、やっとの思い出それを飲み込む


「…………【断覚〝スティール・エモーション〟】」


青ざめた表情でそう呟くシオウ、それを聞いて


「ん?なにか言いました?」


と、リオネが肉にかぶりつくのをやめてそう聞き返す、それに対しシオウは


「いや、なにも。食事を続けようか。」


と言ってごまかし、また肉塊を口に運び始めた


「うん……味覚と嗅覚を殺せば……まぁ…」


さっきまでの青ざめた顔とは違い、今度は虚無の表情だった





因みに、先程シオウが使用した魔術【断覚〝スティール・エモーション〟】は、任意の五感を一時的に消滅させる事の出来る呪文である。


他者に対する使用も可能で、危険性が高いのでシオウが元居た世界では、使用したら即監獄行確定の禁忌呪文に指定されている。






シオウが肉塊を完食した頃には、すっかり日が沈んでいた


「………こ、これで最後の一口か……」


味覚と嗅覚が無くても、そのとても硬い肉は、シオウの顎を充分に苦しめていた


一噛み事に辛そうな顔をしながら、ついに最後の一切れを飲み込む


「おー!完食、お疲れ様です!」


それを見届けたリオネが、拍手をしながらシオウを労う


「うん……ありがとう………暫くは顎が筋肉痛かな……」


顎を擦りながら、ため息をつく


「あっ、シオウさんがいっぱい狩ってくれたんで、暫くはお食事にお肉出しますよ。」


安心したシオウに対し、リオネが真顔でそう言い放つ


「え………」


束の間の安心を破壊するその一言にシオウの顔からの血の気が一瞬で引く

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