無人世界で起こる異変、ついでに異世界転生
「ふぅ……ただいまぁ……。」
ひどく疲れた様子のリオネが、玄関の扉をあける
「おかえり、リオネ。」
出迎えたのは、水魔法で床を掃除している大魔導士、シオウだ。
「しかしまぁ……どうして近くの畑の様子を見るだけでそんなくたびれているんだ?」
様子見だけとは思えない程疲れ果てて帰って来たリオネを見て、心配そうにそう声をかける
「……実は、最近野生動物が凶暴化していて……様子見ついでに畑の柵を強化してきたんです。」
それに対し、まだ整っていない呼吸のまま、訳を説明する
「ほう…それはもしや彼らの事か…?」
シオウはそう、視線を誘導するように窓の方を見る
「えぇえ…!!ウシブタにヘビネコ……!それにトリゴリラまで!!?」
窓の向こうには、牛の上半身に豚の下半身をした生物、蛇のように長く胴体がのびた猫のような生物……それに頭が鶏、身体はゴリラの生物等………キメラのような生物の死体が山のように、積み上がっていた
「すごいですよ!これで今日は久々にお肉が食べれます!」
そういって、慌ててその死体の山へと駆け寄る
「……食べれるのか…?まるで合体獣のような見た目だが……。」
その様子を怪訝な表情で見つめながら、そう質問する
「僕1人になる前には、こんな生き物は存在してなかったんですけどね…」
死体の状態を確認しながら、シオウの質問に対し
「まぁ、毒性はないので……味はイマイチですけどね。」
苦笑いしながら、そう応えるリオネ
「そ、そうかい……?まぁ、毒がないなら……」
少々不服そうだが、それを聞いてすこし安心したような様子を見せる
「今、調理しますね!すこし待っていて下さい!」
状態のいい死体を数体を担いで、いそいそと厨房へ消えて行った
一方その頃、リオネ達の住居から少し離れた平原
1人の青年が、平原で大の字になって寝ていた
「ふが………」
そよ風が青年の鼻をくすぐる、それに反応するようにふと、青年が目を覚ます
「空が……青いな…」
まだ完全に開ききっていないその眼で、ただ空を見つめている
「……………ってか!ここどこ!?」
暫くそうした後、思い出したように飛び起き、周囲を確認する
森、山、川、崖………見渡す限りの自然、元いた世界とはまるで違う、文明のぶの字もないその景色
「…………本当に異世界転生してしまったのか……?」
現状を受け止めきれず、放心し、立ち尽くしている
「なんや、目が覚めたんかご主人」
背後の、それも足元のほうから、聞き覚えのない、なのに懐かしく感じる声が聞こえる
「……………え?」
声のする方へ振り返る、そこには、まるでご当地のゆるいキャラクターのような、小さくて可愛らしくデフォルメされた、サボテンとハエトリグサが合体したような見た目の生き物がそこにいた
「なかなか目ぇ覚まさんから心配しとたっでぇ〜ご主人!まぁ、さっき見つけた美味そうなきのみでも食って元気だせぇや!」
その生き物はそういうと、苺に似た果物を青年の右手に握らせる
「……お前は……」
信じられない、といった表情でその生物を見つめる青年、それに応えるように
「せや!ワイはご主人が前世で世話してくれた、サボテンとハエトリグサや!」
その言葉を聞いて、思わず右手の果物を握りつぶす
「はぁ〜〜〜っ!!?!!?」
その叫びは、ただひたすら青い空の向こうへと掻き消されていったのだった