死と転生は唐突に
俺は雨乃 亜太郎
通っていた大学で所属していたサークルが不祥事起こして、巻き添えで退学処分喰らった22歳フリーターだ。
「アタちゃん、特製珈琲とタマゴサンドイッチ、お願いね」
「承りました。」
ここは今俺がアルバイトとして働いている喫茶店、常連客のおっさんおばさん共からは、愛称としてアタちゃんと呼ばれている
この喫茶店のマスターに教わった手付きで珈琲を淹れ、タマゴサンドも準備する
「……アタちゃんもすっかりここの仕事が板についたねぇ………このままここの正社員になっちゃえばいいのに」
高校と大学が同じ地域にあった事もあり、この喫茶店には長い間勤めている。
「……俺的には、フラットにやれる方が好みなんで………正社員は考えてないですかね」
口にしてみると改めて自分の将来の計画性の無さに、情けない気持ちになる
「ふぅん…まぁ多様性の時代だからね、ワタシがとやかく言う権利は無いけどさ」
(多様性、便利な言葉だなぁ……)
そう思いながら、いつも通りの業務を終わらせる
「おい、亜太郎」
身仕度を終え、いざ帰ろうとした時、店長に呼び止められる。
「…なんでしょうか、店長」
呼び止められる心当たりがない、俺なにかやっちゃいました?
「賄いだ、食ってけ」
と、出来たてのカレーライスがカウンターに置かれる
たまに店長の気まぐれで出してくれる賄い、夜飯を決めてなかった俺にとって断る理由はなかった
「いただきます!」
カレーを頬張る、美味しい!
店長の絶品カレーを腹に収め、帰路につく
「……帰ったら風呂入って寝よう」
そんな独り言を呟く
そんな日常は、天から降ってきた鉄柱に奪われた
「はーい貴方は知っての通り工事現場の鉄柱が落下して、全身潰されて死にました!」
急に死んだと思ったら、なんか女神っぽい佇まいの女性と二人きりの謎空間にいた
「は?」
「事故で死んだと思ったらいかにも女神!って感じの私と二人きりの謎空間……といったらもうアレしかないでしょ!」
なんだこの仮称女神、すごいグイグイくる。
「あ、アレって…?」
アレと言われても心当たりなどない………いや、1つだけある。
創作溢れる現代、小説を始め、漫画やアニメでよく見る様式、もといジャンル。
「アレだよ!アレ!いから始まるア・レ・だ・よ!」
この仮称女神は、どうしても俺にあの言葉を言わせたいらしい
「い、異世界転生……?」
「そう!異世界転生!しかも女神サマからのプレゼント付き!」
女神とは思えない程はしゃぐ、正直転生とかどうでもいいから帰りたい……。
「なによもうっ!テンション低いわね!」
そう言われても、正直コレが現実だと思っていない、走馬灯の変異種だと思っている
「その様子……信じてないわね………」
こんな走馬灯モドキ見るぐらいなら、ウチのサボテンと食虫植物に看取られる夢を見て死にたかった
「話聞けし!まぁいいわ、転生した後に慌てふためくアンタの姿を見てやるわ!」
そういえば最後にサボテンに水あげたのいつだっけ……
「まぁ本来ならどんな力や装備が欲しいかアンタに聞くんだけど?アンタの日常パートに尺使いすぎたからアンタが今一番考えてる事を適当にそれっぽくするから、文句言わないでよね。」
あー4日前だったな、確か、食虫植物の方は昨日蚊食ってたよな…
「そんじゃ転生させるよ〜!今回アンタが転生する所は………えーと…何処だっけ…?まぁいいわ!レッツ、転生!」
途端に、俺の身体は徐々に消えていく感覚に襲われた。
遂にこの変な夢も終わりか……来世は猫かサボテンにでも生まれ変わりたいな…………
そう思いながら、俺の身体は完全にその空間から消滅した。