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重傷者二名、うち二人不審者。

小雨が森を包む昼時、少し歪な小屋に五人(と一匹)の人物が。


うち二人、重傷



「……一応家に運んでは見ましたけど……どうしましょう…」



床に寝かされているのは二体の全身が鎧に覆われた人物


一人は先程まで交戦していた名も知らぬ機械鎧


そしてもう一人は……


暗夜色の鎧を身に纏った、光線の狂騎士、ダークレイ


であった。


この二人が横一列にならぶシュールな光景に、その容態を見ていたトリテンが話しだす。


「こっちのメカニカルな鎧のあんちゃんは全身打撲&軽いやけど、その他にも脱水症状他etc…こっちの真っ黒鎧のあんちゃんは………全身真っ黒こげのベイクドヒューマン状態……やけど血の流れは止まってないからまだ死んではあらへん……いやまぁ…実質死んでるレベルやけど………二人とも、治療を急がんとヤバい状況や!!!」


続けてリオネも


「それはそうなんですけど、二人とも、鎧が取れないんですよ……これじゃあ治療どころか、お顔を見ることもできないですよ…。」


一同がこの状況に困惑しながらも、解決策を考える中、ただ一人、シオウだけが周りと違う様子であった


「……………」


何やら挙動不審なシオウに、亜太郎が話しかける


「…あの、シオウさん…?」


「……ん?なんだい?」


「…違ってたら申し訳ないんですけど……もしかして、あの黒い鎧のヤツ………知り合いですか?」


そういって亜太郎がさした指の先には、光線の狂騎士、ダークレイが


「…やっぱり、わかるかい?」


「…シオウさん、あの人の事さっきからめっちゃチラチラ見てますもん。」


「……露骨すぎたね……彼はレイ、私とは幼馴染みの関係だ、まさか、レイもこの世界に来てたとはね…」


「シオウさんの幼馴染み!?……なんでそんな人がボロボロでここに運ばれてるんですか……?っていうかそもそも!俺が家に隠れてる間に、なにがあったんすか!?!?」


「そういえば言ってなかったね、実は……」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


数十分前



「シオウさ……!!」


リオネの声が届く時には、既に巨大な光の刃がシオウの頭上へと振りかざされていた。


(……っ!この至近距離では回避は疎か、防御魔法を詠唱する時間すら…っ!)


そしてその刃がシオウへ直撃するその瞬間、何者かが光のような速度でシオウへ接近し、そのまま激突


「がはっ!!?」


その衝撃で刃の外へ吹っ飛ばされるシオウ、そして地面へ着弾する刃


凄まじい轟音と衝撃が走り、木々は風圧でしなり、土煙が舞う。



「……!?」


シオウが状況を読み込めずにいると、草むらに身を潜めていたリオネが声をあげる


「シ、シオウさーーーん!!!」


どうやらシオウに刃が直撃したと思っているらしい


「私は無事だっ!私がいいと言うまで、そこを動くないでくれよ!」


土煙でまだ周りの状況が把握しづらいが、シオウはどこから機械鎧が来ても対応できるよう身構える。


しかし……いつまで経っても機械鎧の声や、気配を感じない。


「……?」


違和感を感じながらも、警戒を解かずに周囲へ気を配る。


しかし、始めに聞こえたのは、シオウにとって嫌でも聞きなれたことのある声だった。


「ぉイ……シオゥ……」


土煙の中からは、さっきまでシオウが立っていた場所から、黒色のシルエットが浮かぶ


「ォレイガィノやツに……コろされそゥになッテんじゃねぇーーーーーー!!!!!!!!!!」


その咆哮と共に、土煙が辺りからかき消える。


そして姿を現したのは


「……!!レイッ!?」


ダークレイであった




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



固唾をのんで話を聞いていた亜太郎が問いかける


「それで…どうなったんですか…?」


「レイはそう叫んだ後、そのまま気絶、私と交戦していた奴も、あの刃を繰り出した後、急に倒れ伏し、それを私が運んで……今に至る」


「ひゃー……俺が天ぷら作ってる間にそんな事が……」


「テ、テンプラ……?なんだそれは……ポーションの一瞬……?」


「天ぷらってのは自分の世界で人気の食べ物で……」


「ちょっと!!!!!死にかけてる人が二人もいるんですよ!!!!!呑気に話してる場合ですか!!?」


聞きなれない単語に困惑しているシオウに、テンプラなるものを教えようとする声をリオネがかき消した


「「す……すみません…。」」


いままでリオネから聞いたことのないほど大きく険しい声に、亜太郎どころかシオウまでもが気圧される。


「リオネはんの気持ちもわかる、いうて叫んでもしゃーないわ、コイツらの鎧が中々クセ者やで、どーやっても脱がせれんのや……なんか特殊な解除方法でもあるんかな……?」


そんな場を少しでも和ませようと、間に入るトリテン


「そのことだが、レイ……そっちの黒色の鎧のヤツは、私に任せてくれないか?」


そういいながら、シオウは黒色の鎧ことダークレイを指差す


「シオウさん!?治療法があるんですか!?」


「治療法とはすこし違うが、解決策はある。」


そういうと、シオウはレイことダークレイを担ぎ上げる


「1ヶ月かけてもここへたどり着けないような遥か遠くの森へ放り出す。」


「だめでぇーーーーーす!!!!」


その言葉を聞いた途端、リオネがシオウへビンタを繰り出す。


「真面目に考えて下さいシオウさん!!その人、生きてるのが奇跡レベルの重傷なんですよ!そんなことしたら!すぐ死にますよ!!そんなの私は絶対に許しませんから!!」


ビンタされた頬を擦りながら、シオウは冷静に続ける


「……怒る気持ちもわかるが、私もレイを見殺しにしたくて言っているワケではない、そもそもレイは不死身だ。」


「へぇーー不死身……不死身!!?」


「元々不死身ってワケじゃないんだ、昔の彼は負けず嫌いで友達思いな頼れる存在だったんだ」


「月日が経ち、私は魔道士、彼は雇われの騎士として、それぞれ別の道を歩むことにした…」


「そのうち私たちは疎遠になった。各地を転々とする都合上、文通の類いも自由にできなかったから、仕方ないといえばそれまでなんだが。」


「そしてある日突然、レイが私の前に現れたんだ、今まで着ていなかったこの黒い鎧を身に纏って。」


「レイは私を見るなり襲いかかってきた、これまで彼から感じる事の無かった、尋常じゃない殺気とともに。」


「最初はあまりの代わりようにレイだとは考えなかったが、声や体格、戦闘時のクセが彼そのものな事が彼がレイだという証明だった。」


「レイは自信をダークレイと名乗りまるで別人のように振る舞ってきた。あと、光線の狂騎士とかいう異名もつけてた。」


「それから何度も彼と対峙した。だけど毎回レイだけマグマに落ちたり、海に飲まれたり、台風に巻き込まれたりして消息不明になる。」


「だが、レイは毎回私を狙って襲ってくる。常人なら軽く1000回は死んでるであろうダメージを負っても、数日後には何事もなかったように現れる。」


「何故彼が不死身なのか、なんでこんなに性格が変わったのかはわかっていないが、恐らく、この黒色の鎧が関係していると考えている」






「つまり、なんか久々に友達と再開したらめっちゃイメチェンしとったわっつーことやな」


シオウが懇切丁寧に説明したレイとの関係を、二行でまとめるトリテン


「端的に話すとそうなるね」


それに対して抗議をするのはやはりリオネであった


「だとしても、幼馴染みかつ命の恩人に対してしていい対応じゃないですって!なんですか遥か遠くの森にポーンって!!」


シオウはその主張を受け入れながらも、困った様子で説得を試みる


「私だって、出来ればこんな仕打ちはしたくないさ。だがそうしなければここら一帯は更地と化するかもしれない。」


「「「!!?!!?」」」


驚く一同、そりゃ当たり前である。


「過去に一度、レイと対峙した際に運良く勝利することができてね、その頃には彼がなにしても死なないとわかっていたから、最大威力の爆発魔法を喰らわせて倒したんだけど、流石にやりすぎたと思ってね、近くの宿屋に運んで、そこでレイの治療をしたんだ、鎧が脱げなかったから、治癒促進の魔法をかけて目覚めるまで側にいたんだけど、目覚めた瞬間にいきなり拳が飛んできた。」


「それからはそのまま流れで戦闘に、手加減できる相手じゃないから被害が酷くてね、宿屋の店主には申し訳ないことをしたと今でも思っているよ」


「つまり、目覚めて一秒即バトルっつーことやな」


「まぁそういうことだよ、レイが復活する前に、できるだけ遠くに捨て置かないと、直接的に大きな被害が出るんだ。」


黙って話を聞いていた亜太郎が、青ざめた様子で問いかける


「……もしかしてこれ、シオウさんの世界で一番厄介な人がこの世界にやってきたってことですよね……?」


「うーーん…そうだねぇ…」


その問いに暫く考えた後、シオウの目が死んだ魚のような目に変わる


「………」


「えっなんで黙るんですか!」


「とりあえず彼をここから遠ざけないとロクな事が起きないから今から行ってくるよ」


「ちょっと!!?」


空中遊泳エアスイム


そうして有無を言わせずにダークレイと共に空へ飛び立ったシオウは


「レイだけならまだしも『あの女』までこの世界に来られたら……いや、まさかな……。」


誰の声も届かない空で、そんな事を呟いた


「……いっちゃいましたね……」


唖然とした様子で空を見上げるリオネとシオウ、これからどうしようかとお互いを見合い数秒、そんな二人を正気に戻すように


「おーい……ご主人…?リオネはん…?こっちの鎧の事、忘れてないやろうな?」


とトリテンの一言が響く


「「そうだったぁーー!」」



森林に響く二人の声は、遥か上空にいる魔道士に届くことはなかった。

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