交わる二つの影と光
前回頭無しゴリラに吹っ飛ばされた暗夜纏う閃光、ダークレイ、彼は今、全身を縄で拘束されていた。
「目が…覚めたかね?」
一人の老人が暗黒の狂騎士へと声をかける
その言葉に反応し、鎧がピクリと動く、そして、甲冑の隙間から光る目が、ある男の姿を捉える。
血濡れのシャツに赤く汚れた黒マント。
欠損している左腕。
一目でわかるその筋骨隆々とした体躯は、若い印象を抱かせるが、立派な髭と顔や手の甲のシワが、彼を老人だと認識させた。
老人は狂騎士のすぐ目の前に顔を近づけており、お互いの瞳の反射から、自分の顔が見える程だった。
「………誰だ、お前…?」
しゃがれた声でぼそりとそう呟く暗黒の狂騎士に老人は応える
「おいおい……誰だはないだろう?……前の世界で散々顔を合わせたというに…………エレマキナ…と言えば、思い出すかね…?」
エレマキナ
その単語を聞いた途端、甲冑の奥の瞳に殺意が宿る
「……………貴様…度々俺の野望を阻止してきた無粋なジジイか……」
先程より怒りの籠った声色でそう言い放つ、そのまま老人に飛びかかろうとするが、狂騎士の身体を縛る縄がそうさせない。
「……阻止するつもりはなかったのだが………なりゆきでな………まぁいい。」
そういうと、老人が狂騎士から離れ、奥にある簡素な作りの椅子に腰かける。
「ようこそ。歓迎するよ、暗夜纏う光線、ダークレイ…ワシの第二の城へ。といっても、まだまだ開発途中だがね…。」
片手を広げ、辺りを見渡す仕草をする老人
壁や天井が荒削りの石で、床は軽く藁が敷き詰められているだけの、城というより洞窟といった感じの外装だった。
「…………………歓迎するなら縄をほどきやがれ…」
「……そうだな、いいだろう。」
そういうと狂騎士の死角に控えていた頭無しゴリラが、狂騎士の縄をほどく
「!!」
途端、狂騎士が老人へ殴りかかる、しかし、それはあえなく老人の右手で受け止められる。
「……やはり、前の世界よりだいぶ弱ってるようだな……気を失った状態で頭無に担がれてきた時点で察してはいたが……この老体に片手で止められる程とは…」
軽くため息をつき、受け止めた拳をゆっくりと降ろす
「!!……クソッ…!」
その行為が、狂騎士の怒りを買ったようで、一心不乱に老人へと殴りかかる
「今の貴様の拳の振るい方からは、戦闘技術の一切を感じられん、力任せの一撃…、理性や知的さも感じ取れぬ…まるで獣のようだ……」
次々と遅いかかる拳を軽々いなし、隙を見て右ストレートを一撃、頭部へとお見舞いする
「……………ぐっ…!」
甲冑越しにも関わらず、その一撃は凄まじい威力だった。狂騎士はおもいっきり吹っ飛ばされ石造りの壁に叩きつけられる。
そしてそのまま地面へと突っ伏した。
もう動けないのか倒れた状態のまま、顔だけを老人へ向けている
その様子を確認した老人は、おもむろに狂騎士へ質問を投げかけた
「………ダークレイ、貴様この異世界に転移したのは何日前だ」
「……………数えてねぇよ」
狂騎士の答えに、半ば呆れながらも、質問を続ける
「…………その様子……転移してから寝てないのか?」
「……………」
返事は帰ってこなかったが、この沈黙が全てを物語っていた。
「…さては貴様、飲食すらしてないな」
「……」
そう、暗夜纏う閃光、ダークレイは一週間程ずっと、休みなくシオウを探していたのである。
これまでにこの異世界でダークレイが接種したものと言えば、駆除した獣の返り血ぐらいだった。
「バカか?そんなバッドコンデションでシオウに勝てる訳がないだろう?」
「何故………シオウが出てくる……?」
「貴様の行動理念などそれしかなかろう」
「…」
「とりあえず飯食って寝ろ、そうでもしなければまともに話が出来る気がしない。……頭無達、適当に木の実でも採ってこい」
老人がそういうと、後ろで待機していた首無しゴリラ達が一斉に外へと駆け出した。
「……俺は長居するつもりはない……」
「どのみちその身体じゃ暫くは動けんだろう、たわけめ。」




