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一般人の俺がこの世界で唯一大魔導士の心を満たす事ができる存在になるなんて

ただいまの時刻は大体お昼頃、無事対面と自己紹介を済ませたリオネと亜太郎は、シオウ達と共に昼食をとっていた。


「──という感じでして……」


食事を先に済ませたリオネは、まだ食べている最中の亜太郎に、この世界について話していた(亜太郎の世界の事は、トリテンから聞いた。)


「…………………」


それを黙って聞いているリオネ、いや、喋れないと言った方が正しだろうか。

無理もない、元の世界じゃ到底口にすることがないような程に固く硬い肉を飲み込む為に、全身の力を顎に込め、咀嚼することに全力を回しているのだから、会話をする余裕は1ミリもなかった


「……しっかし、女神サマもけったいな所にワイらを放り込んだもんやて…シオウはんが駆けつけてくれなきゃワイら今頃謎生物達の餌なってる所だったわ」


「謎生物って……ソレ、キミが言えた立場かい?」


「大魔導士様のすごい的確な指摘にぐうの音も電話」


ご主人が話せない代わりに、トリテンが会話を回す、そのお蔭で、今まで黙々と肉と野菜を噛みまくっているだけだった食卓に、賑やかさが生まれていた。

尚、顎が弱々の亜太郎クンはそんな賑やかさを感じる余裕すらなかった

─────約1時間後


ごっくん


死闘の末、亜太郎は遂に大量の水と共に肉の見た目をしたゴム(そんなことはない)を胃袋に落としこむ事に成功した。


「ごちそうさまでした……。」


「1時間23分よう頑張ったな!ご主人!」


亜太郎は今回のこの食事で摂取したカロリー以上の体力を消費し、へろへろだった。


「お疲れ様です!アマノアタロウさん!」


「亜太郎でいいよ……っていうか、見た感じ年近い感じなんだし、もっと気楽に話そうぜ」


労いの言葉を掛けてくれたリオネに対し、食事中にずっと思っていた事を口にだす。


「そ、そうかな……、うん、亜太郎くんがいいなら、そうさせてもらおうかな!」


「そうそう、そんな感じのが一番話しやすいし」


満足気な様子で頷く亜太郎、リオネも心なしか表情が柔らだ様子を見せる、そんな2人のやりとりを見ていたシオウも口を開く


「リオネ君に亜太郎君、私と話す時も、そうやって砕けた口調でいいんだよ?」


「いや……命の恩人にタメ口はちょっと……」


「シオウさんの雰囲気が大物すぎて…自然とこんな口調になっちゃうんです……」


「そ、そうかい……まぁ…無理強いはしないよ…」


シオウは2人に一瞬の躊躇もなく即答をされて、なんだか寂しさを感じてしまった


────そして夕方に差し掛かる頃


亜太郎はトリテンと共にキッチンへと侵入していた


「リオネはんとシオウはんは畑の罠にかかった害獣達を駆逐する為に外出してはる、作戦を実行するなら今やで、ご主人!」


「あぁ、失敗は許されない、俺が喫茶店でマスターから教わった全ての技術を用いて…」


目の前の物体を指差す、そう、


「このクッソ硬い肉を柔らかく、尚且つできるだけおいしくする!!!」


「おーーっ!!」


取り敢えず雄叫んでみたトリテンだが


「でもワイ、料理スキルは女神サマから授かってないで、ご主人」


自分がご主人様に協力できそうにないことを告白する


「トリテンは女神様からブロメライン授かってくれ」


「ブロ……?なんて???」


唐突に知らない単語を言われて困惑するがそれは女神サマの天啓によって掻き消された


「…上手にできたら供物として捧げる事を条件に許可する……らしいで」


それを聞いた亜太郎はガッツポーズをし、


「さっすが女神様!話がわかる!」


と意気揚々な様子


「よっしゃトリテン!この肉の見た目したゴム塊を、ちゃんとした料理へと化かしてやろうぜ!」


「な、なんかよくわからんけど、わかったで!」


ご主人様のテンションに若干押されつつも、トリテンもご主人様にあわせてテンションをあげる





─────すっかり夜になり


畑の様子見を終えたリオネとシドウが、帰路につく途中であった


「いやぁ今日はあんましいませんでしたね」


「そ、そうだね(実は硬い肉を食べるのが嫌でこっそり数匹逃がしていた)」


リオネの言う通り、罠にかかった害獣は少なく、リオネが片手でその全てを持つことができる程の数しかいなかった


「帰ったら早速ディナーの用意をしないと……あれ?なんだか、いい匂いが……」


すんすんと鼻を動かすリオネに釣られて、シオウも匂いを嗅いでみる


「……この食欲を刺激するスパイスの匂い……まさか!?」


何かを察したシオウは、ダッシュでリオネ宅へと向かう


「え?え?な、どうしたんですか?シオウさーーん!!」


困惑するリオネを置いて行き、シオウは亜太郎達が待つリオネ宅までたどり着く


「亜太郎君!…!!やはり…!」


「シオウさーん…置いていかないで……わぁ!」


息を荒げて家へ入る2人、途端にそのいい匂いに魅了される


「あ、お帰りなさい、ライスないですけど、カレーできてますよ」


机の上には、木製のシチューボウルによそわれた具だくさんのカレーが置かれていた。


「いやー、バッグの中身と一緒に転生できたお蔭で、折角だから、カレールウ使っちゃおうと思って」


「お、おいしそーな匂い……」


「さ、覚めないうちに食べましょう」


よだれをだらしなく垂らすリオネ達へ席に着くように促す


「パデュウ……!この世界で食す事ができるなんて……!」


カレーを目の前にしたシオウは、今までのキャラが崩壊を起こすほどに感激していた、涙を流していた。


「ぱ、ぱでゅう…?カレーですよ……これ…」


唐突に知らない単語を出されて困惑する亜太郎に少し理性を取り戻したシオウが補足する


「す、すまない、興奮しすぎた………この料理の事、亜太郎君の世界では、カレーと言うんだね……実はこの料理、私の大好物でね……この世界では食べれないだろうと諦めていたのだが……ありがとう…!亜太郎君……!!」


「……………いや…そんな……」


ここまで感謝されるとは思わず、少し気恥ずかしくなってしまったが、そんな気持ちに浸らせてあげれる程、辛抱強くないものが約二名


「ね、ねぇ亜太郎くん…!早くこのカレー?ってやつ、食べてみたいんだけど!」


「女神様もはよ寄越せ言うとるでご主人!」


「あぁ、全員揃ったし、早速頂くとするか!」


「「やったーー!」」


半月の浮かぶ夜、今宵はいつもよりも賑やかな声が夜空へと溶け込んでいったのだった。

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