二話 寿命問題
「だぁ…見当たらない!!」
そもそもの話だ、どんな姿、どんな形をしているかすら分からない相手を探すのは困難と言うか不可能だ。誰が領主でもおかしくないし、行き交う人々の中に居るかもしれない。それなのに、俺らが知らないから素通りしている可能性があるのだ。くそっ…どうすれば。
「落ち着いて…ください…聞き込み…です…!」
「そうだ!それがあるじゃないか!」
メェルの提案で俺は正気を取り戻す。焦るのは良くない、焦るとすべてが台無しになってしまうのだから。俺は、冷静に観察する。石畳の街道、そこに沿って屋台が立ち並んでいる。家と連結されたような屋台、いわばこれがこの街の市場なのだろう。さて、どこが聞きやすいかな…?
「わたくしはあれが食べたいです!」
「んえ?!」
ミヤビが指さした方向から何やら香ばしく、美味しそうな匂いがする。これは…なんだ?匂いを辿って歩いて行ってみると、そこには串焼きの屋台が出ていた。見た目は…牛串だ。俺は店主に近寄って、人数分の五本を貰う事にした。
「所で…ここの領主を知っていますか?」
「領主ですか?ここにそんな人は居ないのでは?」
「……はい?!」
俺の驚いた声に店主は驚いている。そんな馬鹿な事あるか?!領主が居ない?!じゃあこの街道とか街は自分たちで管理している、そう言いたいのか?俺がミヤビを振り返ると、牛串をペロリと平らげてから”この方たちは知らないと思います”と答えた。え、詰んだ。
店を離れて、考え込む。何故領主を認知していないんだ?ここの領主はそこまで仕事をしていない、と言う事か?それとも…本当に領主が居ない?俺は頭を掻きむしる。今まで順調だったものが、ここに来て音を立てて崩れ落ちていく。いや、落ち着け。居るはずなんだ、代表とかなんでも。
「マルカ、領主が居ない地域ってあるの?」
「聞いたことが無いのだ!絶対に居るはずではあるのだ!」
「だよね?」
「魔王様が与えた任務なのだ、この土地に住まう限り絶対居るのだ!」
マルカの断言は俺に安心を与えてくれる。そう、絶対に居るはずだ。領地を分割している以上、そこを統括している人は存在する。いや、亡くなっている…とか?ありえない話じゃない。認知されていなければ、亡くなっていても分からない。あぁ…どうすればいいんだ。
「そちら様、何か困っているのかの?」
「……。」
「お~い、そちら様?」
「…俺ですか?!」
声のする方を向けば、そこには日本人形の様な綺麗な黒色の髪の毛をした女の子と、洋風人形の様な綺麗な紫色の髪をした女の子が居た。見るからに年齢は…小学生とかそのぐらい。それにしては…なんというか、喋り方に一癖あると言うか…古風と言うか。
「そうじゃ、そちら様以外におるかの?」
「いえ、居ません」
「そうじゃろ?で、何を困っておるのかの?」
「あっと…領主って知ってますか?」
「知っておるぞ?領地を持ち、その土地及び住民に対する支配権を持つ者じゃろ?」
「わお、詳しいですね?」
「そりゃそうじゃろ、わっちらが領主じゃからの?」
「そうですか、領主でしたか……はい?!」
「だから、わっちらが領主じゃ、何か用事があるかの?」
領主が二人である事にも驚きだが、こんなに小さな女の子が…。そうだった、偏見は捨てるべきだった。だって、この世界では長寿の存在っていっぱい居るから。なかなか捨てられないなぁ…偏見は。それにしても…黒髪の女の子しか喋らないな。
「俺は小田健一です、後ろに居るのはマルカ、シュエリ、メェル、ミヤビです。」
「そうか、ご丁寧にありがとの?わっちはタチマチヅキじゃよ?」
「われはモチヅキ。」
日本人形みたいな子がタチマチヅキ、洋風人形みたいな子がモチヅキ…か。十五日の月に十七日の月、双子なんだろうな。この子たちは…何かの武器何だろうか?きっと、武器何だろうな。日本の武器…刀が代名詞だけど、洋風はいくらでもあるな。
「それで、わっちらに何用かの?」
「この領地の問題を解決しに来たんですけど…問題はありますか?」
目の前の二人は顔を見合わせて頷きあう。タチマチヅキは”ある”と答えてモチヅキは”ない”と答えた。うわぁ…綺麗に意見が割れた。やりづらいなぁ…。多分だけど、モチヅキは俺らの事を警戒している。当然と言えば当然だけど、そこまで警戒されるような事はしてないような…。
「なんじゃ?モチヅキ、あるじゃろうて?」
「タチマチヅキ、問題はない。」
「ほれ、あれじゃよ?」
「ない、お帰り願う」
「頑固じゃな、そういう所があの問題に繋がっておるんじゃろ!」
「武器は武器だ、使えなくなれば消える」
二人が喧嘩してしまった。武器は武器?消えるのが普通?何の話をしているんだ?もしかして…武器が擬人化しているのが武人族。武器自体の寿命が来れば…死ぬって事か?ならば手入れしなければ…あぁ、そういう喧嘩をしているのか。寿命問題についての。




