一話 きっかけを探して
「健一さん?何か良い事でもございましたか?」
鬼人の領地を出て東に進んだ所の平原、俺のどこを見てそう思ったのか分からないがミヤビが聞いてくる。良い事があったとすれば…自分の目的が明確になった事だろうか。”やらなくては”から”やる”に切り替わったのは大きかった。目的の再認識、これはシデンとヒカゲのおかげだ。
「そうなんですか…それは良かったですね?」
ミヤビは俺の心を覗いた影響か、剝れて(むくれて)しまった。まぁ…昨日の今日では割り切ることは出来ないよな。ミヤビの負けには驚いたけれど、鬼人の腕っぷしの強さにも驚いた。正直…俺自身の勝負も勝てるとは思っていなかった。うまく行ったのは…奇跡に近いのかもしれない。
「奇跡に近い訳ないじゃないですか、実力なんですよ?」
「そうなのかな?俺は…あんまり自分の実力を信じたくないんだ。」
「どうしてですか?健一さんはこんなにも御強いのに?」
ミヤビは不思議そうな顔をしている。う~ん…シデンから言われた言葉をそのまま言っても…あんまり刺さらなそう。自分の力を過信した者から死んでいく。ミヤビは”シデン”と言うワードによってみるみる内にほっぺが膨らむ。何だか…面白い。ほっぺをムニムニと弄っていると後ろでブーイングが巻き起こる。
「ミヤビさん…ばかり…狡いです…!」
「健一…お主たちはカップルなのだ?」
「え?そう見えた?」
「逆に、それ以外の何に見えるんだい?」
「嬉しいですね!でも…それどころではないのです。」
ミヤビが俺からすっと離れて、何かを考え始める。鬼人に敗戦してからミヤビは何かを考える機会が多くなったように見える。良い事ではあると思うんだけど…あんまり根を詰めすぎない方がいいような気もする。何だか、もどかしいな。そういえば!この世界では武器を装備するとステータス的な何かが上がったりするのか?
「ねぇ?この世界では武器を装備するのは、なんでなんだろう?」
「それは自分の得意分野で攻撃するためじゃないのかい?」
シュエリが首を傾げて”何を当たり前の事を?”みたいな顔で俺を見る。いやさ、そうなんだけど。なんかこう…妖刀的な?爆発的に身体能力が上がる!みたいな感じにならないのかな?とか思ったけど…ないのか。それにああいうのって呪われるとかあるのだろうか?
「でも聞いたことはあるのだ!なんだったか…意思を持つ武器?みたいなのがあるみたいな噂なのだ!」
「意思を持つ武器?!」
それって…戦闘に支障が生じるだけなのでは?!だって、勝手に”右を攻撃!””あ、真正面斬り!”みたいな事を武器がするんでしょ?まずいよ、それ…。いや?考え方によっては強いのか!技術面を補う事が出来るから、ミヤビには打って付けだったりするのかな?
「自動で…防いでくれる…私は…欲しい…です…!」
「クソ強チートじゃない?!流石にまずいよ?!」
「意思がある分、こっちも考えて行動しなくてはならないんじゃないかい?」
「あぁ、それを織り込んで考えるの?難しいけど…使えたら強いか。」
「それが武人族の特徴なのだ!武人族は主と認めた人の武器になって、その人を支えるのだ!」
「あ~!そういう事なんだ?」
「決めました!わたくしは武人族に頼んで専用の武器になってもらいます!」
いつの間にやらミヤビが俺らの会話に加わって目を輝かせていた。しかし、だ。そんな強い武器である武人族が何故鬼人族と手を組んでいないのか?ちょっと気になる所ではある。薙刀は可能性があったけど…レイロウ本人の意思で戦闘を行っていたように思える。きっと何かからくりがあるんだろうな。
そうだ、何気に平原をずっと歩いているのは初めてなんじゃないか?どこまでも見渡せる平原、何もない…ただひたすら草原を歩いている。今までは森、森、どこを見ても森しかなく、視界が開けていた事は街以外では無かった。それに…魔物の数が多い。こうやって話している最中でも幾度となく襲われ、返り討ちにしている。
「ここら辺魔物が多すぎない?」
「何かあるのだ?!もしかして…巣があるのだ?!」
マルカの目が輝き出した。まさか…この広大な草原から巣を見つけ出すとか?!仲間のしたい事を全力で応援したいけど…流石に厳しい……いや。やろう!どっちにしても武人族の領地に着くまでに各々のレベルアップはしておきたいし。少しばかり寄り道する事を決めて、巣を探すことにした。
「で…巣ってどこ?」
しばらく歩き回っても、どこにもない。平原から少し逸れた所の山脈、森。歩き回ってもどこにも見当たらない。なのに、魔物は死ぬほど湧いて来る。何か画策されているのではないか、と疑ってしまう程湧いている。しかもマルカ曰く”レアな魔物ばかりいるのだ!”との事だ。
レイチョウ、大きな幽体の綺麗な蝶。ソウゲンドール、小さなぬいぐるみの様な鳥。マバタキロック、人間の目の様な形をした岩の魔物。様々なレアな魔物が居る、とマルカはうきうきだ。
「見るのだ!あれもレアなのだ!」
「何?」
マルカの指さす方向を見ても何もいない。はて、何が見えたのだろうか?




