(1)
「レイロウ、落ち着け!客だ」
「客…?はっ?!オキビ…貴様ぁぁぁ!!!」
レイロウは見た目は青い長いストレートな髪が特徴で、切れ長い目をしている。クールな印象なのに…鬼の面を被っているかの様な見た目をしている、多分…気迫が凄すぎてそう見せているんだ。俺は流石に身構える。だって…シデンの言う事聞いてないんだもん。
「おい、レイロウ!これはオキビが勝負を挑んだ結果だ!」
「黙って死を受け入れろと?!」
「死んでませんって!」
「口を開くなたわけ!これのどこが死んでないと?!説明しろ!!」
いや…失神して寝ているだけなんだけど…本当に。まぁ、死んでいる状態と死んでいない状態を説明しろと言われても…難しいよね。なんていうか…実際に同じ状態になってもらうか?それはそれで…あまり良くないけど。
「実際になれば分かりますか?」
「なれば分かる?言っていることが分かっているのか?あたいを倒すと?」
「まぁ…簡単でしょうね」
決して調子に乗っている訳ではない。倒そうと思うのなら、言葉が通じる者に対しては煽りが有効的なのはもう知っていると思う。怒りで我を忘れてしまうと…目の前のレイロウみたいに視界が狭まる。これを狙っているんだけど…友好的な種族にやるのは気分が悪いからしない事にしていたんだけど…。
レイロウはみるみる内に顔が青ざめていく。まさか、冷静になるタイプか?俺の疑問の答えは、受けた薙刀の衝撃で分かった。
突然の開幕です!急に斬りかかるは薙刀使いのレイロウ選手!対して、オーキチ選手は冷静に躱す事が出来…?!まさかまさかです!叩きつけられた衝撃で土俵が壊れ、その砂がオーキチ選手を切り裂きます!これはもはや魔法を使った、と言っても過言ではないでしょう!避ける事が出来ず顔を塞ぐ!
「この程度でオキビに勝った…と、ふざけるな!!!」
「落ち着いてください、土俵壊してますよ?」
「落ち着け…る訳ないだろうがぁぁぁぁ!!!」
レイロウ選手は片手でぶんぶんと薙刀を振り回す!確かにパワーは一丁前ですが、薙刀が可哀想ではあります!本来はそういう使い方ではないはずなのです!躱さなくても、勝手に薙刀の方から避けていく!怒りとは、こういう物なのです!一番分かっているはずのオーキチ選手が怒りを振るいますからね!
うるさい!分かってるんだ、自分でも。それでも、大事な何かが失われそうな時…冷静で居る事は出来るだろうか。目の前の彼女はそういう状態、言わば怒りそのものなんだ。
「あの、本当に死んでませんから」
「証明して見せろ!!!」
「あぁ、じゃあ…遠慮なく。」
オーキチ選手は薙刀の二回目の大振りの隙を見て、ステップインで入ります!レイロウ選手は一瞬反応が鈍った!さぁお待ちかねの刺突攻撃!!!狙うはみぞおちです!入り…きらない!レイロウ選手は思わずステップバック!!!薙刀相手にまたしても距離を取られてしまった?!
「お前…何者だ?」
「人間ですよ?ただの。」
「人間…刺客をついに送って来たと言う事か?」
「いえ、だから…殺すつもりはないですって。」
何回言っても分かってくれないし、この戦いも結構長引いている。俺も二連戦でかなりしんどい。汗でべたべたするし、木刀も滑るようになってきた。刺突はかなり神経を使う作業だと思う。避けられると終わりだから、慎重に突く場所を選定しなくてはならないから。
さぁ、これがラストでしょうか!刺突をするために間合いに入るが…なんと?!レイロウ選手はここで薙刀を捨ててまさかの突進を選択した!予想もしない出来事にオーキチ選手は思わず困惑…していない!まさかの、膝蹴りを選択していた!これにはさすがのレイロウ選手も対応出来ない!!!!オーキチ選手の膝はレイロウ選手のみぞおちにクリーンヒットぉぉぉ!!!!
「まさか…この場面で…」
「まあ、色々考えなくてはなりませんからね」
レイロウはその場に倒れ込んでいた。かなり消耗したからだろうか、眠っているみたいだ。と言うか…事前に聞いた話と違う。そもそも、鬼人は動きが遅いと聞いた、なのにかなり動きが早かった気がする。もしかして、鬼人の中にも動きが速い者とそうでない者が居たりするのかもしれない。俺はその場に座り込んだ。
「まさか…二人がやられるとはな」
「あぁ、本当に大変でしたよ?」
「あはは!見事だ!俺もやりたくなってきたなぁ?」
「まさか…今すぐになんてことは言わないですよね?」
「しょうがない、またの機会にするか。」
シデンは俺の目の前に座り込んだ。満足したのか、表情はとても穏やかになっていたが”なぁ、酒…造れるか?”と急にこそっと聞いてきた。なんだ?もしかして…酒が好きなのか?俺が知ってる限りだと造れるのは…マルカだけだと思うんだけど。
「多分造れますよ?マルカが」
「そうか、あいつに言ってくれねぇか?造ってくれって」
「え?自分から言ったら造ってくれそうじゃないですか?」
「なんだか頼みづらくてよ?領地全体の頼みとして聞いてくれよ、な?」
シデンは”こういう時は酒が飲みたくなんだよ”と言った。目を見れば分かる、酒飲みの目をしている。鬼って聞いたし…斬っても斬れないからね、鬼人の体も、鬼と酒の縁も。




