六話 実力
「やめておけ、きっと勝てねぇぞ?」
「シデン様?!何故っすか?!」
「あれは纏っている雰囲気が違うぞ、死線をいくつも越えてきてる」
俺の方を二人が話しながら見ている。そんなにか?俺ってどういう風に見えるんだろうな?ちょっと今度聞いてみるか、ハヤテとかハヤテとかハヤテとかに。俺、ハヤテしか友達居ないんだ、この世界で。俺が呆けているとシデンが”見ろあの表情を、あれがまともに見えるか?”と言っている。おい、あんまりコケにするんじゃない!
「良いでしょう、別に弱くても文句は言わないでくださいね?」
「んな?!飽くまで自分は弱者だと言うっすか?」
「いやぁ…まぁ。怪我はさせないつもりで行くんで」
「……舐めてるっすか?」
オキビの姿勢が変わる。さっきまでは相撲の様な構えをしていたのに、今度は刀を腰に携えたような姿勢をしている。本気で来る、という事なのかもしれない。ただなぁ…真剣抜くわけには行かないんだ。どうした物かなぁ…。考え事をしていたら、俺の元に一本の木刀が飛んで来る。
「それを使うのだ!」
「うん?これ、俺が死ぬ奴じゃない?」
「どこまで出来るか分からないけど、一応使えるのだ!」
マルカが遠くから叫んでいる。そんなに離れてんの?俺って…何者?まぁ、いいや。俺は土俵に入って、オキビを見つめる。何とかなるだろうな、俺は…ここで死ぬような奴ではないだろうし。木刀を目の前に構えて、じっと機会を伺った。
今回は相撲ではございません!なんといっても総大将自ら出てきてしまいました、東はオーキチ選手!西はオキビ選手!オキビ選手の独特な構えを見つめまして、機会を伺うはオーキチ選手!目の前の敵を今まで散々斬ってきたから分かりますが、隙がまるでありません!どうやって切り崩したものでしょうか!
「動かなくていいんですか?」
「なんすか?動かないのが自分のポリシーっすよ?」
「そうなんです?の割にはミヤビの時は動いて…あ、もしかしてポリシー崩さないといけないぐらいやばかったです?」
「まぁ…強かったっすね」
簡単には乗ってくれない、煽りの数々!口での牽制を終えまして、オーキチ選手は考えます!無暗に一歩踏み込んだ瞬間!その瞬間にオキビ選手が動きました!あり得ない速さの手刀!木刀で受け流すには無理がありますので…ここはステップ!見事な動きでなんとか躱しました!
「へ?!あちきの手刀が躱されたっす?!」
「ふぃぃ…危ない!危ないよっ!」
オーキチ選手は相手の戸惑い、その一瞬を見計らって懐に入る!手刀を構えるオキビ選手は既にオーキチ選手を視界に捉えている!ただ、ここからはオーキチ選手の領域だ!目に焼き付けてこの活躍を!!手刀をあっさり躱しまして、狙った先は首!!首を見つめて木刀一閃!!オキビ選手は思わずステップ!その動き、逆に見極めてオーキチ選手は前にステップ!
「読まれたっすか?!」
「甘いかな、見たら真似したくなる?」
ステップステップ、ステップイン!!踏み込みからの素早い刺突!!相手を捉えてジャストヒットぉぉ!!!取ったのは、オーキチ選手です!オーキチ選手は汗を拭います!感想はどうですか?オーキチ選手!先ほどのステップステップは良いん(イン)でしたか?!
うるせぇ…ダジャレまで言ってくる、この実況。まぁ、自分で実況してるんだけどね。いやぁ…良かった。殺してしまった訳ではないか。オキビを抱き上げてシデンの元に運ぶ。と言うか、硬すぎ。木刀だったとしても、俺は刺突としてスキルを発動しているんだ。致命傷になってもおかしくなかったのに…失神だけか。
「は、やっぱりお前が勝つ…か。」
「良かったですよ、刺突で穴が開かなくて」
「あぁ…あれはやばい。魔物なんかは木刀でも十分だろうな?」
「まさか、普段は真剣を使いますよ」
「要らないだろ、お前には…持たせてはいけない物だ。」
シデンは乾いた笑いを一つ零す。そして”良かった、オキビ。お前が無事で”と呟いた。俺は…そこまで強い力を持っていると?実況していただけなのに?鍛えている訳でもない…このスキルは、もしかして危ないのか?シデンと対面して静寂の空間を共有していると、何やらどたどたと爆音が鳴り始めた。
もしかして、外で壁を叩いているのか?俺は壁を調べてみたが、どうやら壁の方から音がしている訳では無さそうだ。であれば…家?俺らが来た方、入り口側を見ていると、音がどんどん近づいて来るのが分かった。あぁ、何かがここに来ているな。
「お前の気迫が呼んだんだ、ただ、これは止めるべきかもな」
「え?俺の気迫?」
「あぁ、お前の気迫はとんでもない、この地に攻めて来た者として認定されているかもしれねぇ。」
入口の扉が勢いよく切り裂かれ”なんの騒ぎだ?!この…痴れ者めぇぇぇ!!”とすごい剣幕で迫られる。あ、これはまずいかも…。俺…死んだか?薙刀の様な槍の様な武器を持っている事だけは分かる。そう、しかも刃先は…おもちゃではない。だって、扉が真っ二つだったもん。




