五話 腕試し
言わせておけばからの鉄板の流れはもう終わりにしてくれ…。最近俺も良く使っているような気がするし、うん。俺は目を丸くしている小柄な鬼人に向かって頭を下げた。
「申し遅れました、俺は小田健一です、後ろはメェルとマルカとシュエリです」
「あはは!面白い、得体の知れない何かを感じるなぁ。俺はシデンこの地の領主だ、よろしく頼む」
小柄なのに、豪快に笑って名乗りを上げてくれた。やっぱり領主だったか、それにしても…領主自らここに一人で来るなんて、なんとも不用心と言うか?警護は要らない程強いという事を見せつけるためか。何にせよ、牽制はされていた訳だ。してやられたなぁ…。
「それにしても…お前らは不思議な恰好をしてるじゃねぇか?」
「これはですね、ハヤテから貰った物なんですよ」
「ハヤテ?もしかして、竜人領主のハヤテか?」
「えぇ、そうです。ご存じですか?」
シデンは上を向いて、指を折っている。何かを数えているんだろうか。数え終わると手を打って”その名を聞いたのは数千は昔かもな?”と言った。と言う事は…鬼人族も相当長寿な種族と言う事になるな。古くからの知り合いではあるのだろうが、近況を報告していないとなれば、ミヤビの事は知らないだろう。
「長く生きているんですね」
「まぁな?所でよ?何の用事なんだ?」
シデンは腕を組んで首を傾げる。ここで急に目的を告げても…どうにか出来る自信は無いな。かといって、偽って中に入れてもらったとしても…あんまり良くはない。俺はミヤビを見るが、ミヤビは拗ねていて何も視ようとしない。分かった、ここはどうにかしよう。
「領地の中の問題を解決しに来たんです」
「あぁ、そうか。俺らの領地には問題がありそうだ、と言っているって事か?」
「そういう訳ではないのですが、どこの領地でも問題を解決してきまして」
シデンは俺を見つめて”ふ~ん”と興味なさそうに呟く。興味のツボが分からないな。それに…領地に入れてくれない可能性すら出て来た。マルカを見てもマルカはシデンを見つめているだけで、特に動きを見せない。見誤ってしまっただろうか?だが、シデンは”まぁいいか。中へ入れ”と門の内側へ手招きしてくれた。
中は、どこか懐かしく、求めていたような景色。そう、日本の田舎の風景が広がっていた。田んぼには黄金の植物が生えていて、その周辺で違う作物を育てている。家屋は全て、木造平屋の家。昔ながらの引き戸で本当に昔の日本そのまま、みたいな感じだ。なんでこっちの世界でも日本を感じることが出来るんだろうな?この世界の不思議だ。
「おう、こっちに来い」
階段を上った先、小高い丘の上に一軒の平屋がある。ひと際大きな木造平屋の建物。庭からは領内を一望できて、とても綺麗だ。そのまま玄関を通り、部屋に案内される。中は長い廊下が左右と上方向に続いていて、部屋には仕切りとして障子がある。障子の中は畳張りの部屋になっていた。
一つの部屋の前で、シデンは止まって振り返り”ここだ、入れ”と言って、障子を開けた。中は、二十畳の空間になっていて、大きな木製の机に、座布団が敷いてある。どこまでも日本を感じる造りだ。そのうちの一つの座布団に腰かけた。
「問題はある、が。お前に務まるかどうかは分からんな」
「どういう事ですか?」
「うちの奴らは戦うのが大好きでよ?結構無茶やる奴が多いんだ」
シデンは呆れて溜息を吐いた。あぁ、戦闘狂がいっぱい居るから生傷が絶えない訳か。身内同士でやってたとしても、降参を言わない限りは…続くとかそういう事か?確かに、俺には務まらないかもしれないな。ミヤビが適任ではあるが…今は拗ねているし、そもそももっと生傷が発生してしまいそうだ。
「どうしますかね…。」
「戦っても良いってんなら、戦ってくれよ?」
「あぁ…え?俺が?」
「そうだ、お前だ!お前が一番強いだろう?」
困ったなぁ…。別に戦闘のスペシャリストって訳じゃない。けれど、メェルは盾、シュエリは鈍器だけど力がどうかって言われると…。ミヤビかマルカか俺…。そうなれば、まぁ、俺か。俺がやるしかないかぁ…。俺が項垂れているとシデンが”なんでお前はここに来たんだ?”と尋ねて来た。
なんでここに来たか?それは、ここに来た単純な理由か?それとも、大元の理由か?魔王の事を話してもいいかどうか…ってのは難しいな。まぁ、話してみるか。
「魔王に会うために印を集めているので」
「あ?何で人間がそんな事をしてんだ?」
「魔王に会って対策を立てようかな?と」
「…は?お前がか?どこの?人間が生きるための対策か?」
「いえ、イトベリアが生き残るためのですよ?戦争を起こさないのが一番なんですけど…難しいかもしれないので」
シデンは余計に混乱したのか頭にクエスチョンマークが浮かんだままかの様な状態で止まってしまった。一番肝心な事を言い忘れていたかもしれない。でも、これを言っても余計に混乱しないだろうか?いや、混乱しても別に支障は出ないか。
「俺はイトベリアに住んでいるので…イトベリアの竜人領民になりますかね?」
「お前がか?!ハヤテが許したのか?」
「俺の隣に居るミヤビはハヤテの娘ですから」




