三話 知識のすり合わせ
な…なんだ?体が動かない…。もしかして、もう一回…し、しんだ?声を発そうとしても声は出ない。暗闇の中、歩いて行くとミヤビとメェルとシュエリとマルカ。四人がくっついている。何も言葉を発さない、じっと見つめて抱き着いたまま。な、なんだ?何で居るんだ?
「ぐぁぁ?!」
跳ね起きて、状況を確認する。なんでかマルカまで俺と一緒に寝ていた、それで俺の上に四人とも乗っている…。どんな寝相をしているんだよ。ていうか…夢かよ、良かったぁ。何だか気持ちが悪い夢だったから。俺は、起き上がって伸びをしてから欠伸をする。きっと…眠れてない。
ベッドはキングサイズぐらいある。もちろん、部屋は清潔に掃除されている。うなされて起きた理由は、上に乗られていたからだ。呼吸が出来なかったんだろうな、危ないよ?目的を果たす前に味方に倒されてしまうよ。夢の事を考えていたら、マルカが起き上がって来た。
「んむ?!ここはどこなのだ?!」
「自分の家でしょ?」
「何故…此方はここで寝ているのだ?」
「それは俺が聞きたいよ?」
だって、昨日は四人で風呂に入って、俺はすぐに上がって眠ったから。この部屋に通されて?ん?何でマルカは記憶喪失みたいになってるの?俺とマルカは向かい合わせて二人して首を逆方向に傾げている。なんなんだ?
「え?何でここに通された?」
「此方は知らないのだ!お~い!なんで此方はここに通されたのだ?」
「仲間になられたので、一緒に寝た方が宜しいかと思いました」
いつの間にか傍にメイドが居てギョッとした。いつからそこに居たんだ?まぁ、いっか。どっちにしても次に向かう所とか話さないとだし。なんだか…マルカに会ってから想定外の事が起こりすぎて記憶が混濁してしまった気がする。俺は三人を起こして、メイドに着いて行った。
案内されたのは、大きな部屋だった。真ん中に十数人は座れるような机があって、椅子も人数の数だけある。机の上にはテーブルクロスが敷いてあって、燭台が何個か飾られている。しばらくそこで呆けていると、朝食が運ばれてくる。すごい、ここは…高級なホテルのような感じだ。
「ありがとう、朝食まで」
「良いのだ、此方は何もしてないのだ!」
「ご主人様は眠りこけていただけです」
「な?!その言いぐさは無いのだ!」
朝食を持ってきてくれたメイドはマルカにすごく冷たく接していた。なんというか…容姿から想像できるような物言いだ。無表情でクールな感じ、ストレートな黒い髪を腰まで伸ばしている。ご主人リスペクトは伝わっている…気がする。多分ね?運んでくれた料理を食べ終えた。
「これから鬼人族の領地に向かうんだ」
「そうなのだ?気難しいけど…大丈夫なのだ?」
「気難しいのか?!」
「そうなのだ!知らないのだ?」
俺以外の皆にマルカが目を合わせるが、シュエリやメェルやミヤビは”知らない”と答えた。そうよね、別に他の種族に興味がある訳じゃないし…。どっちかって言うと…問題解決をして、領主の印を貰う旅って感じだし。
「なら、此方が案内するのだ」
「出来るの?」
「出来るのだ!」
「マルカ君はなんでも出来るのだね?」
「なんでもは出来ないのだ!」
元気よく答えるマルカ。なんか…天才と話しているって印象だなぁ…。突出して何かが出来る、それ以外には興味が無い、という。しまった、皆に話を聞いてなかった…。仲間になる事の是非を。
「もっと早くに聞いてくださるかと思っていたのですが…残念でした。」
「ごめん、皆はマルカが仲間になってもいいんだよね?」
「はい…賛成…です…!」
「僕ももちろん大丈夫だよ?」
「わたくしも問題はございません、昨日の件は水に流して差し上げます」
「今更なのだ?」
「いいんだ、確認が大事。」
「所で…あの領地は威圧感とパワーがすごいのだが、大丈夫なのだ?」
「ぱ、パワー?」
パワーがすごいってなんだ?後、威圧感?かなり高圧的に接してくるって事?どういうタイプの威圧感なんだろうな。名前に鬼が入っているから、強さで言えば強いのは分かるんだけど…。ていうか、力比べをしたの?マルカが?!俺はマルカの体を見る。マルカは細いし、小さいし…とてもパワーで張り合えるタイプとは思えない。
「パワーはわたくしにお任せください!」
「う~ん…新竜で行けるのだ?」
「んな?!失礼ですね?これでも、領主の娘なのですよ?」
「ミヤビ君に劣らずな力…これは大変な事になりそうだね?」
「領地が…壊れて…しまいます…!」
皆が各々感想を口にする。いや、喧嘩をしに行く訳じゃ無いから大丈夫だと思うんだけど…大丈夫だよな?しかし…俺に対して何かを言われたらミヤビの頭に血が上って…山をぶつける可能性はあるか……まずいけど?!山をぶつけるとか物理的に不可能なはずのパワーワードを口にしているけど?!
「まぁ…喧嘩は無しだよ?」
「健一さんに喧嘩が売られなければ大丈夫ですよ!」
ははは…ほどほどにしてほしいな。




