(2)
「そういえば、どの程度の魔法を使うの?」
「うむ…その気になれば街一つを消すくらいなら出来るのだ!」
「そんなに元気よく言わないで?!」
「そうです!実際に人間の街を消せば良いのではないでしょうか!」
「怖すぎ!」
ミヤビは輝いた笑顔で言っていた。本当にキラキラしていたんだ、怖かったよ?二人で町二つ消せるからね?ミヤビなんか物理で消せる、山を投げつけるっていうね?俺の所属している団体は物騒なんだなぁ…。
「もうちょっと話していたいけど…」
俺は外を見る。窓から顔を覗かせている太陽はもう沈みかけで、外は少し暗くなっていた。話していたいけど、泊まる場所も無い、と。俺らはこの後どこに行けばいいのだろうね?ミヤビ達に目で訴えかけるけど、皆は首を横に振る。いやぁ…想定外すぎる。そんな中、マルカは”あ!そうなのだ!”と言って、メイドに話しかけていた。
「泊まってくといいのだ!」
「いいの?」
「いいのだ、もう仲間なのだ!」
マルカはぴょんぴょんと飛び跳ねている。その仕草は…甥っ子を相手にしているみたいな可愛さがある。良かった、泊まる場所が出来て…。俺は胸を撫でおろして、お礼を言った。
「そうだ、どんな研究をしているんだ?」
「む?そうなのだ!魔物の行動、素材の扱い方、肉の食べ方、と言った所なのだ!」
マルカはニコニコしながら答える。あぁ!あれ、食べ方の研究の一環で食堂やってるのか!と言う事は…食べ方関連でお酒にも手を出したって事か?やっぱり、どの世界でも食べ物にお酒を合わせようと思うのは共通認識なんだろうな。俺が頷いていると、メェルとシュエリが鋭い視線を浴びせてきた。もしかして…心が読めるようになったのか?!
「酒も造ることが出来るんだよね?」
「そうなのだ!なんで知っているのだ?」
「食堂に寄ったからね、蒸留酒が飲めるなんて思わなかったよ」
「すごいのだ!知っていると思わなかったのだ!」
「あれは…草根木皮で再蒸留しているんだよね?」
「んな?!企業秘密なのだ!誰が教えたのだ?!」
「あぁ、あれは聞いたんじゃないんだけど…話すと長くなるから割愛するよ」
「なんなのだ?!其方はただの人間ではないのだ?」
「健一さんに失礼ですね!ただの人間ではないのです!だって、この世界の人間ではないのですから!」
ちょっと?!俺がミヤビを勢いよく見るとミヤビは口を押えて”しまった”と言う顔をしていた。まぁ…いいや、どこかで話す事にはなっていただろうから。この先は話さなくてもいいけど…マルカの目が輝いているんだよなぁ…。研究者ってこういう所にも性質が出るんだなぁ。
俺は今までの事を話した。シュエリも初めて聞くだろうから、少しだけ丁寧に。自分の事を語るのは恥ずかしかったけど、なんだか物語を作っている気がして面白かった。話し終えると、超大作の映画を見終わったような目をしたシュエリとマルカが目に入った。多分…信じ切る事は出来ないだろうな。
「なるほど…そういう事が…面白いのだ!」
「面白いかな?」
「健一君の人生はかなりハードだったんだね?」
「う~ん…そうかな?最初はそう思ったけど…こうなる事が分かっていたんだったらきっとこの道を選んだよ?」
仲間が出来て、酒が美味しく飲めて、やりたいことが出来る。誰かに俺がやった事で喜んでもらえる、本当の感情を知る事が出来る…この世界に来てから体験した事は本当に素晴らしい事だらけだ。最初からこっちに来ていれば、とか思ったこともあるけど。それでも、あの出来事は俺には必要だったんだ、と今は思える。
「と、言う事はもっと色々な事が研究出来るのだ!!」
「まぁ、そうかもね?」
「薄情過ぎませんか?もっと感動しても良いと思うのですが…。」
「私は…何回聞いても…悲しいです…。」
メェルはスンスン鼻を鳴らして、泣いている。何回聞いてもメェルは泣くんだよなぁ…。シュエリは少しばかり複雑そうな顔をしているけど。ミヤビはなんでか胸を張っている。本当に面白いな、何が起こるか分からないから人生なのか。二回目の人生も歩める事に感謝しないとね。
「そうだ!皆は少し臭うのだ、風呂に入るといいのだ!」
「ストレート過ぎだ!ていうか、風呂あるの?!」
「あるのだ、全員で入ってくるといいのだ!」
「分かったよ、行こうか健一君?」
「そうですね、行きましょうか?」
「待て待て!!俺は最後でいいから!マルカ、止めてくれ!」
「いい男はハーレムを持つと聞いたのだ!」
「あ…これ、ハーレム認定されるのね?」
「うむ、そこまで女性を揃えておいてハーレムじゃない、と言う方がおかしいのだ!」
マルカは手をしっしっ!とやって、俺らを追い出した。ぐぐぐぐ…入るしかないか。俺は諦めて全員で風呂に入った。そこから先は正直覚えていない。必死に体を隠して、早く出て…なんだかどっと疲れたからそのまま眠ってしまった。メイドさんに案内してもらった、部屋で。




