一話 魔王と首都
「ねぇ?そんなに魔物を倒して大丈夫なのかな?」
俺は目の前に築かれた魔物の山を見て、ふと不安に陥る。この辺はまだ、森人の領地の中だ。森人達はかなり気を使っていたはずなんだけど…。ミヤビとメェルが狩りの手を止めずに”大丈夫じゃないですか?””大丈夫…です…!”と大きな声で言った。本当かな?俺は隣に居るシュエリに視線を合わせる。
「大丈夫じゃないかい?所で…この恰好ってどうなんだい?」
「うん?似合ってるじゃないか?嫌だった?」
シュエリの恰好は俺らと似た格好になっている。ハヤテがミヤビにこっそり渡していたらしい。ミヤビは今白色のスーツに身を包んでいる。なんでワンピースじゃなかったのかと白と言う点が少し気になるけど…これはこれで似合ってるし良いかな。シュエリは自分の恰好を見ながら”まぁ…僕も気分はいいよ”と赤くなりながら言った。
「それさ、恥ずかしいけど性能がいいんだよね」
「そうなのかい?これはどういう効果があるんだい?」
「えっとね、防臭抗菌…汚れない?だったかな?」
「本当かい?!そんなに効果があるなんて…かなりの代物なんだね?」
「かもしれないね?」
「ふぅ…いい汗をかかせていただきました!」
隣に来たミヤビを見るが、汗なんてかいてない。運動になったのかな?発散出来たならいいけど…。これさ、今から解体しないといけなくない?それと…調理するの?これ…。俺の目の前の死体の山は、森の木と同じぐらい積みあがっている。手加減を覚えられたのは良い事だけど…ね?
「所で、皆は魔王についてどれぐらい知ってる事がある?」
協力関係を築きたいなら、相手の事を知らなくては。人間がもうかなり攻めてきている状況ではある。獣人、竜人、森人が被害を受けているのだ。この状況は伝えるとして…。俺は魔王がどんな姿とかどんな性格とか何も知らない。事前情報が全くない。呼ばれ方が魔王様でハヤテと仲がいい?のと…前コルトランド国王と仲が良かった事しか知らないのだ。
「申し訳ないのですが…わたくしもそこまで詳しく聞いたことは無いのです。」
「えぇ?!ハヤテは何も言わなかったの?」
「はい…父は何も教えてくれないのです”実際に会って見たほうが面白かろう?”と言っていましたよ?」
あぁ…なるほどね?実際に会った方が面白い…ね?でも、この後もし魔王城周辺で情報収集が出来るならしてみてもいいな。魔王…どんな姿なんだろうな。大きな角とか生えてて、人間に近い姿で…マントを着用で、全身黒ずくめとかかな?はは、少し楽しみだ。
「そこまで想像できるのですか?」
「まぁ…俺の元居た世界ではこういうのが多かったんだ。それか、人間とは違う邪悪な姿で描かれる事も多かったかなぁ?」
「元居た世界、とはどういう事なんだい?」
シュエリが俺の方を見て、訝し気に言った。そういえば…ミヤビとメェルには話したけど、シュエリには何も言ってないのか。知りたいと思ってくれるのかな?俺がじっとシュエリを見つめるとシュエリは頷いて”知りたいよ、健一君の事ならね?”と言った。心を読まれてしまったみたいだ。
「じゃあ…後で話そうか?」
目の前に積まれた魔物の山を解体して、日が暮れる前にテントを張る。そういえば、テントを張るのは獣人領から竜人領に移動する時以来だけど…狭くね?張ったテントを見つめて、どうにか四人で寝れるか試行錯誤してみる。中に入って寝方を変えてゴロゴロするが、どうにも四人は収まらない気がする。
「今更なんだけどさ?これ…収まりきらないよね?」
「そうですか?健一さんの傍に固まって寝れば良いのではないでしょうか?」
「そう…です…!」
「そうだね、僕はそれで構わないよ?」
「落ち着いて聞いてね?それは…無理だ。」
流石にこの世界の気温が高くなくても…俺の体温が上がってしまう可能性がある。別の意味でね?いくら欲が…薄いと言ってもそれは無理かな。しかも、若返った影響で多分、欲も薄くないよ?良くも悪くもね?困ったなぁ…外で寝るしかないかな?俺が唸り続けたせいか、皆は困惑していた。
「ミヤビに…竜になってもらって、外で寝るかな?」
「まぁ?!それは素敵な提案ですね!」
「んな…?!それは…良くない…です…!」
「どうして?」
メェルは俯いて顔を赤くしている。外で何かをする事なんて無いし…それが一番手っ取り早いよなぁ…。俺も流石に寝るってなったら地面に寝れないし、ここからはまだ一日ぐらい歩かないといけないぐらい距離がある。
「しょうがないから、ね?」
「しょうがない…ですか?わたくしの上で寝るのは…しょうがない?」
「あぁ、違くて…言葉のあやだ!」
「違う女の名前かい?!」
「だぁ?!なんで面倒な彼女みたいなムーブをするんだ?!」
皆でクスクス笑いあって、その日は眠ることにした。夕飯を取った後、ミヤビに竜になってもらって眠る。まぁ…寝心地は凄い良かった。竜って…すべすべで柔らかいのに温かいんだよ?知ってる?それに…臭くないんだ。正直…生臭いかと思ってたんだ。




