八話 新しい世界
「あ、そうだ。ハヤテ?領主の印の件なんだけど」
「む?我が渡すのか?もう一個我の印が欲しいか?」
「それさ、認められ無さそうだから本当にやめて欲しい…」
「がはは!であるな?では、新領主のゼルとエルに言っておこう」
「ありがとう、俺から言うのは少し…」
「であるな、流石にねだるのは良くないだろう」
「うん、お願いするよ」
「我になら言えるのにな?」
「友達にはね?」
「いいぞ!それぐらいが良いのだ!!」
ハヤテは豪く上機嫌になって俺から離れて行った。それから、新領主のゼルとエルが俺の元に走って来る。二人の様子を見ているとまるで双子を見ているような感覚になる。この二人って…双子じゃないのかな?まぁ、それは聞かなくてもいいでしょう。所でなんの用事だろう?
「お待たせしました!」
「こちらをどうぞ!」
用意されていたのか、と言うぐらい早かったが、俺は領主の印を受け取ることが出来た。はぁ…長かったなぁ…。いや、問題解決の速度を考えれば…遅くは無いのか。かなりいい調子で進めているのかもしれない。魔王に会うためには…後五つか。ここまで腐敗している領地がこれ以降無ければいいのだが…。
「ありがとうございます」
「こちらこそ!」
「ありがとうございます!」
二人が揃って頭を下げて来る。俺はその場を後にして、シュエリを探した。シュエリが居ないな?どこに行ったんだろうか?少し離れた場所に居た、メェルとミヤビに話を聞くが二人は知らないと答えた。知らない、か。じゃあ、一回行ってみるか?シュエリの家に。
三人で集会場を後にする。そのままシュエリの家を目指すが、何やら気温が上がってきている気がする。どんどん近づくにつれて…妙に暑い。シュエリの家を目視出来たその時には、視界に写ったのは真っ黒に焦げた家だった。
ここにはもう帰ってこない、そう決めた。最初からこうするつもりで建てたんだからね。僕は自分の家を見つめながら心の中で呟いた。色々な世界を見たかった。それでも、僕が育ったこの領地が改革されるまでは居ようと思っていた。それももう解決されたから。それに、新しい家…と言うか、居場所は健一君の隣と決まっているんだ。
「お別れだね、今までありがとう」
ツリーハウスに呟きながら火を放った。大丈夫、必要な荷物は僕の身一つなんだ。知識は詰め込めるだけ詰め込んだ、森を傷つけないように、燃え移らない様に配慮して家を建てた。あぁ…それでも悲しいような気もするかな。ここ最近で色々あり過ぎたんだ。おっと、火を消さないといけないね。新しい世界を見に行ける、僕の…願いなんだ。
消火に勤しんでいたら、後ろからガサゴソと音が聞こえる。もしかして…健一君が来てくれたのかな?僕の事を置いて行かない様に…迎えに来てくれたのかもしれないね。白馬に乗った王子様なんていうけどさ…彼は何に乗っていると思う?白い竜だよ?笑ってしまうよね、本当に最高さ。
「しゅ、シュエリ?!」
「ここに居るよ」
消火をしていたのか、シュエリはへとへとになりながら俺らの傍に来た。何があったんだ?!何故家が燃えたんだ?!
「何をしていたんだ?!」
「あぁ…ここにはもう戻ってこないからね。家を燃やしたのさ」
「えぇ?!何を?!他の森が死んでしまうかもしれないのに?!」
「そうだね、いつかこうするために用意していたのさ」
いつかこうするために?いつかは燃やす事を前提にして建てていたのか?それならこんな森の中に造らなくても良かったのでは?俺の中には様々な疑問が渦巻いているが、それよりもシュエリが無事だったのなら何よりだ。シュエリが起き上がって”ありがとう、準備は出来たよ”とハニカミながら言った。
集会場に帰って次の領地を決める。そこにはもうハヤテの姿は無かった。さぁ…今回はどこに行くことになるかな。地図を広げて四人で見つめる。ここから行けるのは…おお、魔王城も近いのか?じゃぁ…南東に向かって行って魔王城を見た後、そのまま南西にある鬼人族の領地に行くか。それがいい。
「はい、わたくしはそれが良いと思います!」
「申し訳ないのだけど…言葉にしてくれるかい?」
「はい…二人だけで…通じていると…私たちは…理解できません…。」
シュエリとメェルが俯いて言う。いやぁ…これね、俺が悪いんじゃないんだよ、ミヤビが勝手に俺の心の中に返事をしてしまうからさ?でも、俺の所為か。だって、俺がそれに甘えて説明しないんだもの。
「南東に向かって魔王城を見学、後に南西に向かって鬼人の領地に」
「分かったよ、それがいいだろうね」
「分かり…ました…!」
よしよし、気合も入ったし、いざ新天地へ行こうか。俺らが旅立ちの準備をして、領地を出るころには、大勢の領民に囲まれていた。大変な事になってしまったけれど、何とかして出る事に成功した。後ろからは”またお越しください!””あなた方は英雄です!”と恥ずかしい言葉も聞こえてくる。恥ずかしいけれど…誰かに見送られるのは心地よいかな。




