七話 管轄を広げる
「シュエリがならないから…誰を新領主にするべきなんだろうね?」
「さぁ、僕に聞かれても分からないよ?」
「そうかぁ…。」
シュエリを新領主にする計画はそのまま失われてしまった訳で…。シュエリはリーダーに向いていると思っていたんだ。領民思いで、新しい物を受け入れる事が出来て、皆を導いていける。更に、声も通ると来た。逆に…シュエリ以外だとリーダーに向いている森人は居ないかもしれない。
「俺が失敗したかな…?」
「そんな事はないさ、この笑顔を見て欲しい。」
シュエリが俺の隣で目の前を指さす。”これは健一君が届けてくれた最高の贈り物だよ”と言った。嬉しい事を言ってくれるな。でも、一応責任は感じるんだ、俺が最後まで責任を取る、と。領主の交代までは見守る、それは約束だ。
「シュエリ以外なら、誰がやっても変わらないだろうね?」
「はは、嬉しいけれど…きっと適任が居るんじゃないかい?」
「んな事言ったってなぁ…。」
あ、そうだ!ハヤテにも責任を取ってもらおう!実際俺の事をハヤテが仕向けた訳だし、ハヤテに報告も兼ねてこっちに出向いてもらおう。俺らがハヤテの方に出向くと…ミヤビに連れて行ってもらうか、歩くかだ。きっと…ハヤテなら飛んできてくれるだろう。
「ミヤビ?ハヤテに連絡って取れるかな?」
「はい、取れますよ!どのように取りますか?」
「こっちに来て、一緒に手伝って欲しいと伝えてくれる?」
「分かりました!今から連絡をしますね!」
そう言うと、ミヤビは頭に手を置いて何やらおかしなポーズをし始めた。もしかして…テレパシーとかなのかな?竜人族って、そんな事まで出来るのか?本当に万能だなぁ…。すると、ミヤビが笑って”流石に家族限定ですよ?”と言った。それぐらい制限がないと…そうか、使えていたら、俺らにも使えていたはずだもんね。
数分の内に、ハヤテが来る。早すぎてびっくりした、俺らが歩けば数日なのに、ハヤテが来ると数分…。
「うむ、やはりきな臭かったであろう?」
「そうだね、言った通りだったよ」
「がはは!まさか問題解決までしてくれるなんてな?」
「え?もしかして…?」
「いや、それはそうだぞ?我が子とお主らならやってくれると思っていたぞ?」
「まぁ…所で全部事情は知ってるでしょ?」
「うむ、知っておるな?であるから…森人を集められるか?」
俺が森人の元に行く。すると、森人達は”分かりました””すぐに向かいます”と言ってハヤテの前に来てくれた。そういえば…さっきから話を纏めてくれているのって、この目の前の女性と男性の森人だな。俺が二人に気を取られていると、ハヤテが急に”我がここの領地まで管轄する!”と言いだした。
「は?!ここまで?」
「うむ、それが良かろう?」
「まぁ…有難いけど…それでいいのかな?」
森人たちは代表二人を軸に相談している。決まったのか、二人が俺らを振り向いて”お願いします”と頭を下げた。ここまで来てようやく一安心だ…。じゃない?!俺は領主の印を貰わなければいけないのに…!
「うむ?我が渡せばよいか?」
「それ、ハヤテの印になるじゃないか」
「であろうな?」
「それじゃダメでしょ?」
「であるか?では…新領主を決めねばなるまいな?」
ハヤテはにやにやしながら俺を見ている。クソ…はめられた!!俺はハヤテに相談したかったのに…。でも、さっきから話している感じ…この目の前の男女が新領主として就いてもいいのではないだろうか。男性と女性は良く似た双子のような見た目で、透き通る金色、肩まで掛かるストレートの髪、柔らかい目。本当にそっくりだ。
「二人の名前は何ですか?」
「ゼルです!」
「エルです!」
男性がゼル、女性がエル。少し出来すぎな感じはしたけれど、ゼルエル領だし二人で領主をしちゃいけない決まりもない。男性と女性の両方の視点を持てるし、この領地にはうってつけだろうな。俺がハヤテを見ると”そうだな、我もそう思うぞ?”と同意してくれた。後は二人が受けてくれるかだけど…。
「分かりました!」
「拝命いたします!」
「良かった…。それじゃあ、新領主の誕生と言う事で!」
拍手が巻き起こる。まさか新領主の誕生に巡り会えるとは思わなかったけど、これで良かったんだな。ハヤテは”まさか健一に二つも渡せる日が来るとはな?”と言って豪快に笑って喜んでいたけど。嬉しいけど、嬉しくないよ?魔王に会えるかどうか分からなくなるんだから。
これで一件落着かな…。はぁ…疲れた。俺はその場に座り込んだ。全てが終わって、平和に近づいている気がした。しかし、まさかここまで人間が脅かしているのか…。ハヤテが隣で”まだまだきな臭い事が出て来るかもしれんな?”と言っている。フラグになりそうな事を言うのはよしてくれ…。
「ていうか、管轄になるってちょくちょく見に来れるの?」
「であるな、大体はヒジリに任せておけば行けるぞ?」
「ヒジリ…優秀過ぎ。」
ハヤテと二人で笑いあった。




