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「うわぁ…最悪だ」
「今更後悔したところで遅い!!」
「森を汚しやがった…不法投棄だ、しかもガラスなんて回収しずらい物を…」
「なんだ?小さい声で喋って?辞世の句でも読んでいるのか?」
「違うに決まってんだろ!!ふざけんな!!!」
オーキチ選手は駆けだして、相手の懐に潜り込む!ここからが本番です!相手も全力、こちらも全力!一番大きな戦闘が始まります!先に動いたのはオーキチ選手でしたが…ユーリストア選手もオーキチ選手の剣筋を受け止める!!ギリギリとユーリストア選手を押しまして…ユーリストア選手、もはや腰を反らせてギリギリ耐える事しか出来ない!!
「ぐぐぐ…何処に…このような…力が…」
「お前には分からないだろうな?」
「ふざけるな!!」
オーキチ選手は押し戻されて、ガラスの上に立ってしまった!ユーリストア選手が笑い、オーキチ選手に目掛けて剣を振るう!激しい屈折が起きて、無数の剣が地面から生えて来る!躱しきる事が出来るのか…?!
深呼吸…。屈折は俺の元に来るわけじゃない。屈折は対象物を指定できるわけではない。と言う事は、屈折に俺が写って無ければ俺の元には飛んでこない。ならば、俺は映らないように出来るだけ早く動くことが出来れば…こういう時こそ、英次のステップが活きるよな!!
オーキチ選手は前後左右にステップを踏んで躱していったぁぁぁぁ!!!無数の剣はオーキチ選手を捕らえることが出来ない!!ユーリストア選手は顔が歪んでいる!!まさか、ここまで有利な展開を出来るとは思いませんでした!まさしく、”有利”ストアです!こちらに有利を売ってくれたぁぁぁ!!!
「有利を売ってくれてありがとう」
「んな馬鹿な!!!」
「所で…これ防いでいいか?」
俺はミヤビに声を掛けて、上空で待機してもらう。最初からこうしておけば良かった。光さえ遮ってしまえば、後は剣同士の戦いになるんだ。純粋な剣同士なら…俺の方に分があるかな。スキルで追い詰める事を俺は出来るけど…。
「くそっ、くそっ…くそっ!!!!」
「もう喚いても遅いんだけど…一応確認だけ、このまま死んでもらうけどいいよね?」
「嫌だぁ…嫌だぁぁぁあああ!!」
ユーリストア選手は見苦しく剣をぶんぶん振り回す!しかし、オーキチ選手に当たるはずはありません…が?!なんという事でしょう?!たまたま振った剣が、光を屈折させていた!オーキチ選手の目から血が出ている!オーキチ選手はそれでも怯まずに近づいて行って…斬ったぁぁぁ!!!ユーリストア選手は閉店しました!
「はぁぁぁぁ。」
俺はその場に座り込んだ。どれだけ長い事戦闘させてくるんだ…。最後は油断したなぁ、俺もまだまだなのか。人の事を言えないじゃないか、それにしても…痛てぇな、これ。どうしよう、傷は深くはないはずだから見えるとは思うんだけど…目が開かないんだ。後…殺すつもり無かったんだけどなぁ。怒りや憎しみは人の理性を外させるのか、俺も獣なんだろうな。
強い衝撃を背中に受ける。柔らかいけど、しっかり力を込められていて、まるで抱きしめられているかのような感触。後ろから”大丈夫かい?本当にごめんね…”とシュエリの声が聞こえた。俺は振り返って”大丈夫”と言おうと思ったけれど痛みでうまく声が出せなかった。
「あぁ…斬られてしまったのかい?」
「少し…ね」
「治療するよ、目を閉じてくれるかい?」
「ん?治療?」
俺はシュエリに顔を向けたまま、目を閉じた。すぐに温かい光が斬れている箇所を覆い、痛みが引いた。あれ、これは…なんだ?身体能力の向上で回復速度が速まった…とか?シュエリは俺の耳元で”ヒールが出来るんだ、簡単な傷なら治せるのさ”と呟いた。
シュエリに傷を治してもらって、俺は上空を飛んでくれていたミヤビに声を掛ける。ミヤビはすぐに降りてきて”見事な腕前でございました”と言ってくれる。見事でもなんでもない…。それに、まだ仕事は残っているんだ。腐敗していた領主を駆逐しなくてはならない。辺りを見回せば、すぐそこ、ツリーハウスの根元辺りに転がっている領主を見つけた。
「で…貴方は関係者な訳ですが、どうして欲しいですか?」
「わ、儂は…知らんぞ?」
「森人の皆さん、どう思われますか?」
森人は皆して、俺の傍に集まって来る。事情を知らないからか”何が起こるんですか?””どうしたと言うんですか?”と皆でがやがやしている。どう説明したものかなぁ…。一から説明してもいいんだけど、長いんだよなぁ。俺が困っていると、シュエリが”任せて欲しい”と言って、俺の前に立った。
「領主は先ほどの人間をこの地に呼び寄せて全員を奴隷にしようとしていたんだよ」
「な?!それは本当なのか?」
「なんのメリットがあって…?」
「さぁ?それは直接聞いてみるといいんじゃないかい?」
シュエリが領主を睨みつける。領主はバツが悪そうに俯いていた。さて…話してくれるのかな?森人と言う種族を犠牲にしてまで受けようとしていたメリットは何なのか。




