四話 男女の協力関係
「はぁ…はぁ…」
「死ぬかと…思いました…。」
「ミヤビ君は…パワフル…なんだね…?」
シュエリの家の前でミヤビ以外が肩で息をしている状態。俺らはなんとか逃げ切って、ミヤビが山を捨てる所まで見守る事が出来た。今後は、ミヤビに身体強化を掛ける事を禁止しよう。じゃないと…マジで街が滅ぼされる。ミヤビは首を傾げながら”どうされましたか?何故お逃げになられたのですか?”なんて言ってる。分かってないんだ、これぐらいじゃ死なないと思っているから。
「俺らはね?あれを投げられたら軽く潰されて死んでしまうんだよ?」
「まぁ?!そのような危険な事をしていたのですね…申し訳ございません…」
「うん…次回から気を付けてくれればそれでいいんだよ」
「この後…どうしますか…?」
メェルが息を整えて聞いてくる。そうだ、これから行わなければいけないのは…狩の仕方の変更だろうか?しかし…今でも十分に食べることが出来ているのなら、そんなの気にする必要は無いんだ。困ったなぁ…。
「健一さん?森人の食糧事情はかなりカツカツですよ?」
「え?何で分かるの?」
「はい、碌に食べることが出来てない方が何人もいらっしゃいましたから」
「あぁ…”視た”のか」
「ええ。領主だけは食事をする事が出来ておりますので…あの方は肥えていらっしゃいます」
まさか…ハヤテの言ってたきな臭いが当たっているのか?しかし、そんな事をしてどこにメリットがあるんだ?森人を弱らせる事に意味を見出すのは…森人の領主がする事じゃない。何かが介入しているとしても…森人の領主にとっても森人にとってもマイナスなはず。
「詳しく調査する必要があるかな?」
「ふふ、そこまで思ってくれるだなんて…やはり健一君の方が”王子様”なんじゃないかい?」
「はは、俺はそんな理想的な奴じゃないよ。」
「そうなのかい?それでも…僕にとっては王子様に見えるけれどね?」
「…え?」
「いや…?!なんでもない、今のは忘れてくれないかい?」
シュエリは素早く俺に背を向ける。王子様っぽい性格をしていても、やっぱり少しは恥ずかしくなるんだな。俺が頷いていると、ミヤビが横から入ってきて”健一さんの良いところであり悪いところでありますよ?”と言った。なんだ?何のことだ?俺にはさっぱり分からない。
「とりあえず…領民は話を聞いてくれるから行こうか」
「そうだね、僕の話じゃ無ければ聞いてくれるだろうね」
皆で集会場まで歩き始めた。歩いている最中は終始無言だったが、集会場が近づくにつれて、ワイワイと活気ある声が辺りを包み込んでいる。あぁ、これだよ、この声が聞きたいんだ。平和で、皆が楽しそうな、この感じだ。俺らが集会場に現れると、一斉に森人は俺らの元に集まって来た。
「皆さん、聞いてください。」
「どうされたのだ?健一さん」
「実は、狩の事情が芳しくない事を聞きました」
森人は一斉にざわざわし始める。”どこでそれを…””確かに…ここ最近は食べれていない…”と騒がしくなる。本当に当たっていたんだな。こういう時はミヤビが居てくれて本当に助かる。単刀直入に言ってしまおうか。
「狩の仕方を変える気はありませんか?」
「そ、それで事情は改善されますか?」
「改善するでしょう、しかし皆さんの協力が必要です」
「具体的にはどんな事でしょうか…?」
「女性と男性で手を取り合って、狩をするのです」
また皆はざわざわし始める。”いや…健一さんの言う事ならば…””しかし…女性が?危ないのではないか?”など様々な意見が飛び交う。しかし、そこでシュエリが声を張り上げた。
「皆!これから先、更に厳しくなるかもしれない。今改革を行わないでどうすると言うのだい?」
「んな?!そんな事言われなくても…分かっている!」
「だったら…やってみないかい?」
森人が静まり返り、ぽつぽつと”やるしかないなら…やってやろう!”と言う勢いに変わった。なんだ、シュエリの声は届くじゃないか。よしよし、これでいい。シュエリが声を上げてくれる事には驚いたけど…それでも、森人が改革を起こした、と言う事に変わりはない。これは森人の意思だ。俺はすぐに改革の内容を頭の中で想像することにした。
「今の狩り方はどういう事を中心に行っていますか?」
「今は…木の上から待ち伏せして行っています」
「と言う事は…獲物が来なければその日は終わりですね?」
「と言う事になります…。」
「であれば、女性陣の魔法を使って、追い立てをしてみましょう」
俺は森人に説明をした。魔物を身体強化を掛けた誰かに引っ張ってきてもらう。それを、木の上から仕留めると言う、今までとあまり変わらないけど、効率の上がる方法を提案する。すると、森人の一人が”身体強化とは何ですか?”と聞いて来る。身体強化の説明もしなくてはならないか。
身体強化の説明を終えて、実践もすることにした。身体強化を掛けていない時と掛けている時の差。それと、練習もする。いきなり走る速度が変わってしまえば、足が追い付かなくて転んで食われてしまう可能性もあるからだ。慎重に慎重を重ねていく。皆が慣れた頃、いざ、狩に出かけた。




