三話 革命家
「ん…?ちょっと待てよ?」
「はい?どうかされましたか?」
ミヤビが俺の言葉を聞いて、立ち止まった後に振り返る。俺の実況で手加減を覚える事が出来るんじゃないか?ある程度のコントロール性能がある、と言う話なのであれば…。そこから手加減を身体に染み込ませる事も可能か?
「本当でしょうか?!試していただいてもよろしいでしょうか?」
ミヤビはわくわくしているらしく、俺の手を握って答えた。試す価値があるのなら、してみようか。俺らは歩き回りながら魔物を探しては、実況をしてミヤビに手加減を覚えさせていく。魔物を何体狩れたか分からないぐらい狩ったとき、ミヤビが俺の実況無しに手加減で敵を倒す事が出来た。
「ぐはぁ…疲れた。」
「お疲れ様でございました!」
ミヤビが倒れそうになった俺を抱きとめる。疲れているのはミヤビのはずなのにな。ミヤビはぶっ通しで魔物を数百は狩り続けていた。底なしの体力が本当に羨ましい。はぁ…実況も頭を使うんだなぁ…。昔の散々実況していた頃とは違うんだ、ちょっとやっただけでも頭が疲れてしまうのか…。
狩を何時間したのか分からない、だが、出て来た時には昼前ぐらいの感覚だったのに、今はもう日が暮れている。明日もこれをするべきかな?ちゃんと体に染み込ませないとな、手加減を。俺とメェルはミヤビに抱えられながら森人の元へと帰って行った。
「なんじゃこりゃ?!」
森人の元に着いた時、まず初めに驚いたのは明りが灯っている事。それと、地上からでも確認出来る程無数の家々が立ち並んでいる。ここに来た時は街と言うより…キャンプ地だったのに。今や街と言うのに相応しい。階段を上って、森人を探す。最上階付近の踊り場では市場なんかをやっていて、活気に溢れていた。
「あ!アドバイスお兄さん!」
「おぉ!アドバイスのお方!」
俺の方に気づいて、皆が走って来る。おぉ…壮観だ、美男美女が一斉に俺の元に…。いやいや、邪な事は考えてはいけない!しかし…家は欲しかったんだな、やっぱり。落ち着くもんなぁ。俺もハヤテに家を用意してもらってから、家に帰りたくなる事があるからなぁ。
「領主は何か言ってましたか?」
「いえ、何も言ってないです!」
「そうですか、それは良かったです…?見に来たって事ですか?」
「そうですね、後ほど呼ばれるのではないでしょうか!」
あれ、俺に対して敬語になっている…?おかしいな、完成前までは敬語では無かったのに。それに後ほど呼ばれるとは…どういう事だろうか?今はまぁ…アクションを待ってみるか。森人達はどんちゃん騒いでいる、のは良いけど…俺らは…野宿になるのかな?
俺らが大木に寄り掛かっていると後ろから”どうしたんだい?何か困りごとでもあったのかな?”と声がした。気取った言い方ではあるが、柔らかい印象で…まるで王子様みたいな声。今までの森人とはまるで違う声質だ。振り返ると、階段を今上ってきていた。
オレンジ色のストレートなミディアム髪。細く鋭い目つきだけど、柔らかい表情をしていて、かっこいいけど可愛らしい森人。それが最初の印象だった。
「あの…俺らに言ってますか?」
「そうだよ?君ら以外には…僕の声は届かないさ」
完成した街を見つめて一人で”これも…僕は言ったんだけどね”と愛おしそうに近くの家を撫でながら呟いた。届かない…?この森人の言葉が届かない…魔法が掛っているとかか?それとも、なんだ?俺の悩みを聞いていたのか、ミヤビが俺の耳の傍に来る。
「除名ですね」
「んな?!なんだその制度?!」
「分かりませんが…心からそう伝わってきております」
ミヤビがこそこそと俺に耳打ちで伝えてくれた。除名したって…あぁ、除名しているから無視されるって事か?それは良くない事だな。だけど、何をしたら除名処分になるんだ?確かに飛びぬけてイケメン…ていうか中世的?明らかにモテそうではあるけど、そんな単純な話では無さそうだ。
「僕の話はそれくらいにしておいて…何を困っていたんだい?」
「そうです、泊まる場所を求めていまして」
「そうかい…じゃあ、僕の家に来るかい?」
目の前に居た森人は俺達に向かって手を差し伸べる。有難い申し出だ、俺らは目を見合わせて、目の前に差し出された手を取って一緒に歩き出した。
森人の集会場住がある場所から、三十分程離れた場所。そこには、五メートル程の木があった。階段が螺旋状に付いていて…ってこれ?!俺らが指示を出した物と一緒じゃないか?!それを、この森人が一人で組み立てたと言うのか?一から?見れば見る程、完成された家だ。階段を上って、ついて行く。家は俺らが余裕で眠れる程の大きさがある。と言うか…ウッドハウスだ、四角くて、地面に建てるような。中を覗けば、そこには綺麗に整頓されたリビングが広がっている。全ては木から出来ていて…まるで空中に建っているとは思えない。
「こんなの…他の森人が建てた物よりはるかに…。」
「いいかい?それは嬉しい事だね、ありがとう…それと自己紹介がまだだったね?僕はシュエリ、見ての通り除名された森人さ」
「俺は小田健一でこっちがミヤビでこっちがメェルです」
シュエリが俺らに頭を下げたので、俺らも頭を下げて挨拶を交わした。




