(1)
作業風景を眺めていると、ふと”手伝った方がいいのでは?”という気分になる。近くでせっせと働いている森人の一人を見つけたので、近寄って声を掛けて見る事にした。
「あの、作業を手伝いますよ?」
「大丈夫!もう、後少しだから!」
そう言うと、森人は俺の傍から消えて行った。う~ん…避けられていると言うよりはこれは私達の仕事です、という責任感って感じがするよな。って事は…俺はアイデアだけ出したら後は邪魔だった?!嘘だ…そんなの…。
「健一さん…やはり滅ぼして差し上げた方がよろしいですか?」
「怖い!そんな事しない方がいい!平和が大事!」
大体俺らの恰好を見てみ?黒いスーツと黒いワンピース、それに真っ白い着物の男女だよ?これ、森を開拓しに来た人みたいじゃない……?ていうか、違わなくない?現にツリーハウスを建てるように指示を出してしまった訳で…。はぁ…なんか罪悪感がせりあがってきた…。
俺は近くにあった木の根っこに腰かけた。メェルもミヤビも俺の傍に来て一緒に腰かけて来る。完成までは俺らは蚊帳の外だし、どうするのが正しいだろうか。家が完成すれば、一応少しだけこの領地の問題解決に近づくことは出来る。後は領主に説明する事と、認識を変える事か。
「はぁ…問題が山のようにあるね」
「皆…気づいてない…みたいです…」
「そうだね、実際当人たちは気づかない物だと思う」
当たり前から”なんで”と考える事は難しい事だ。常識という言葉は判断を鈍らせる材料でしかない。もちろん必要な常識はあるが、要らない常識の方が遥かに多いだろう。なんで?が浮かばない程浸透してしまえば、それに慣れてしまうんだ。
「何しようか?」
「どういたしましょうか?狩でもいたしますか?」
「あぁ!丁度いいかもしれないね」
ミヤビが嬉しそうにしている。自分の提案が受け入れられたからかもしれない。狩か、ここに来るまでに遭遇したのは…ミヤビの速度についてこれず弾かれてどこかに飛んで行ってしまったんだよな。稼ぎにするには…俺らが攻撃をするのがいいけど、ミヤビとも一緒に戦いたいよなぁ。
「その…嬉しいのですが、わたくしが手加減を出来るようになるには、もう少し時間が掛かってしまうかと…」
「そうなんだよね」
「私と…健一さんで…狩を…しますか…?」
「うん、それがいいかもしれないなぁ。」
俺たちは立ち上がって森の中を歩くことにした。付近の捜索をしてみるが、魔物は見当たらない。森人族の男性陣は優秀な狩人なのかもしれない、森人族も痩せている感じでもなかった訳だし。領地付近より更に奥へと進んでいくと、そこに大型の面白い魔物を発見した。頭が鳥、体はライオン、尻尾は蛇の魔物だ。
「え?何あれ?全然知らないし、どういう構造なんだろう?」
「構造は知らないのですが、美味しいですよ?」
「え?!美味しいの?!」
「はい、食したことがありまして!大変美味です!」
ミヤビがニコニコしながらロックオンしている。メェルは鼻をスンスンと鳴らして”毒があります、きっと”と言った。あるだろうな、なんなら尻尾の蛇と頭の鳥は同時に別の攻撃を仕掛けてきそうだ。
「じゃあ…行ってみようか?」
「はい…久しぶりに…活躍できそう…です…!」
さぁ、元気に参りましょう!後ろからの奇襲攻撃を仕掛けます!しかし、こちらをじっと見つめているのは、尻尾であるはずの蛇です!蛇はシュルシュルと舌を出し、メェル選手とオーキチ選手を品定めしているかの様です!メェル選手がターゲットを引いてくれている!頭の鳥もこちらの存在に気づいた様子です!
「よし、とりあえず斬りかかってみるよ」
「お願いします…!」
オーキチ選手の斬りかかり!飛び込み一閃をひらりと躱し、相手はオーキチ選手を睨みつけ!鳥は鳥でもカラスのような見た目ですから、少しばかり怖気づいてしまいます!メェル選手は完全フリー!今か今かと飛び掛かる瞬間を見定めて…行きます!メェル選手の飛び掛かり!大楯で弾かれた魔物はふらついております!蛇の噛みつきを難なく躱し、角を身体に突き立てます!
「おぉ!いいね!」
オーキチ選手も便乗します!ここから急展開!出血多量の魔物は角の刺さった脇腹辺りを気にしています!頭が傷口を見た瞬間を狙いすまし、首と胴体の連結部分を目掛けて振り上げるぅぅぅ!!!首を落とすことは出来ませんでしたが、致命傷を与える事に成功しました!魔物はグラグラと揺れながら、傷を庇っています!
「行けそうだね」
「はい…頑張ります…!」
メェル選手の突撃に、為すすべなく魔物は倒されます!起き上がろうと必死に地面を蹴るが、力が入らない!!魔物はそのままオーキチ選手の刃を直接受けて、絶命に至りました!これこそが、まさしく奇跡の連携とでもいう物でしょうか!絆が織りなす見事な一撃でした!
「健一さん?これがスキルと言う物なのでしょうか?」
「うん?あぁ…あれって聞こえるんだ?」
「…?なんの…話…ですか…?」
「あぁ、俺のスキルの話」
「とても心地よい歌を聞いているみたいな感じがいたします!」
ミヤビが”あぁ、攫われた時にも聞いた事がありました!”と嬉しそうにしている。そうか、俺の実況で喜んでくれる人がこんなにも近くに居てくれたんだ。




