八話 三人の親和性
名付け…経験した事が無い。自分が昔に家族に迎えた犬のポチ。それぐらいしか名付けの経験が…。俺に出来るのか?この子たちにぴったりの名前を付けるなんて…。俺は二人を交互に見る。白と黒の女の子と男の子。クールだけど芯がある、穏やかそうに見えて負けん気が強い。正反対の特性を持った子たち。あぁ、浮かんだ。考えれば考える程しっくりくるな。
「女の子は雅、男の子は聖だ」
「ほう、いい名前だな?して、意味はなんだ?」
「雅は優雅とか気品がある、聖は知徳の高い者という意味かな」
ミヤビは立ち姿と着物の着こなしに気品を感じる。それに比べてヒジリにはクールな印象がある、これは知恵によって全てを見通すと言う意味を込めた。颯も一文字な感じがするから、一文字がいいだろう。我ながら完璧じゃないか?
「我ながら、と?我みたいだな?」
「心を読むんじゃない!!」
「良い名前です!健一様、一生大切に致しますね!」
「僕もヒジリという名前を大切にします。」
二人そろって感動に打ちひしがれている。なんで?そもそも、なんで俺が名付け親になってしまったの?親であるハヤテが付けるのが一般的では?というか、生まれてこの方名前が無かったのか?!それはそれで…なんというか。あぁ!だから”我が子ら”と呼んでいた訳か。
「ミヤビもヒジリも健一の心に感化されたのだ」
「え?そうなの?」
「はい!ですので…名付けをしていただきたく思っておりました!」
「僕たちも心を読めるので。」
「うわぁ…恥ずかしいな。」
救った時も遊んでいた時も…何を考えていたっけ?!やばい、考えれば考える程恥ずかしくなってきた…。どうしよう…?!俺は立ち上がって、扉の方へ逃げようとする。しかし、がっしりと腕を掴まれた、メェルに。メェルに?!なんで、メェルが掴んでくるんだ?!
「健一さん…話は…最後まで…!」
「なんでメェル?!仲間でしょ?!」
「恥ずかしいから…逃げては…駄目です…!」
「そうだぞ!ここからが大切な話なのだ」
「ここからが?」
俺は急に込めていた力を解放する。すると、メェルが倒れ込みそうになってしまったので、手を取ってこちらに引き寄せた。大切な話…あ!領主の印を貰う話しかな?あれは必要だ!
「ミヤビかヒジリのどちらかを旅に同行させるが良い!」
「んな?!それでいいのか?!」
俺はハヤテを見つめる。ハヤテは頷いて”それが良いのだ、我が子らの要望なのだから”と言った。二人とも連れて行くのは無理だ、この領地を継がせるのも大事な役目、とも言っていた。いやぁ…ここでさ、俺が片方連れて行ったら、残った片方は因縁が残るんじゃ…?
「心配には及びません!もう話はついているのです!」
「え?」
青い瞳を俺の方にじっと向ける。ミヤビの瞳を見ていると、吸い込まれそうになってしまう。びっくりして目を反らす。すると、ミヤビが”わたくしがお供して参ります”と言った。
「俺は…そんなに魅力的な人間じゃないよ?」
「冗談をよしてください!誰かの為に自分を顧みずに行動する事、これを出来る種族がどこに居られますか!」
ミヤビは俺の傍に来て俺の手を握る。”わたくしはあれから貴方にお礼を差し上げたかったのです”と耳元で囁いた。人助けはあくまでも結果として付いてきた物だ。俺は…俺の実況をして、やりたい事をこの世界でやる事が目標のどうしようもない人間だ。それでもいいと言うのだろうか。
「そんな事はありません!やりたい事をやっている事がどれだけ素敵な事か、分かりますか?」
「いや…そうか。」
「そうです、やりたい事をやって、人助けになるのなら…健一さんが素敵な人間という事の裏返しではないですか!」
青くて輝く瞳には、一粒の涙が浮かんでいた。あぁ、怖かったよな…辛かったよな。ただ、遊んでいただけなのに、心に傷を負ってしまったよな。俺は握られていた手を握り返す。俺の実況というやりたい事をやった事で世界が平和になるかもしれない。いいじゃないか。夢はでっかく持っていないとな!
「そういう所をお慕い申しております!」
「あはは……え?」
「な…?!」
メェルが驚いた顔をして、俺とミヤビを交互に見る。ハヤテとヒジリはにやにやしながら俺らの様子を見ていた。きっと意味が違うんだよな、ただ、兄妹みたいな意味で慕っているだな。助けてもらったから、貴方を人として好きです!的なあれだ。そうだとしても…ここまで言ってくれるのなら。
「じゃあ…一緒に行こうか」
「はい!よろしくお願いいたします!メェルさんもよろしくお願いいたしますね?」
「分かり…ました…。」
メェルはぎこちない笑顔を俺とミヤビの方に向けた。何か嫌だったのかな?すると、ミヤビがメェルを連れて、端の方へ行って何やら囁きあっている。相談が終わったのか、ガシッと抱き合って帰ってきた。その時にはもう、満開の笑顔になっていた。
「さて…どうしようか?」
「わたくしは冒険の事情は知らないのですが、戦闘能力などをお見せした方が宜しいですか?」
「あぁ!そうだね、見せてもらった方がいいかも。」
ハヤテとヒジリに挨拶をすると”行った行った!”と言わんばかりに手を振っている。近くの森にも魔物ぐらいなら生息していたはずだし…見に行ってみようか。




